大腸がんの抗がん剤の選択が容易に シスメックス子会社が独バイオ医薬品企業と診断薬を共同開発へ

2014年6月7日 17:24

 厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、2011年1年間の死亡数のうちトップは悪性新生物、いわゆる「がん」で、死亡者数35万7305人で総死亡数の28.5%を占めている。このうち大腸がん(結腸がんと直腸S状結移行部および直腸のがんの合計)による死亡数は1万4694人だった。性別でみると、男性は9393人、女性は5301人だった。

 大腸がんは、戦後、日本人の食生活や生活環境の変化で急速に増え始め、今ではがんによる死亡の第3位にまで増加している。

 シスメックス<6869>は2日、同社の子会社であるシスメックス アイノスティクスとドイツのバイオ医薬品会社Merck Seronoが血中遺伝子検査技術による大腸がんコンパニオン診断薬の共同開発契約を締結と発表した。

 この契約は、シスメックス アイノスティクスが、Merck Seronoが既に発売している転移性大腸がんの抗がん剤(製品名:アービタックス)を対象としたコンパニオン診断薬として、血中にある、変異するとがんを引き起こすことが知られている遺伝子であるRAS遺伝子変異検査薬をシスメックス アイノスティクスの保有するBEAMing技術により開発するというもの。

 このBEAMing技術は、血液中に放出される微量血中循環がん遺伝子を高感度で検出することを可能とし、従来の患者のがん組織における遺伝子変異様態を把握する生体検査に代わり、非侵襲的に(身体へのダメージが少なく)抗がん剤の適否に関する情報を得ることができるという。

 「Liquid Biopsy(リキッド バイオプシー)」と呼ばれる手法で、手術による組織摘出や生体検査を必要とせず、血液中のがん遺伝子検査により簡便かつ最適な抗がん剤の選択を実現するもの。今後、がん組織を用いた抗がん剤に対する医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査であるコンパニオン診断薬がリキッド バイオプシーに置き変わることが期待されるとしている。

 シスメックスグループとして個別化医療をさらに推進する重要なステップとなるという。今後は、両社共同で市場導入を進めていく予定だ。

 ちなみに筆者の父も大腸がんで亡くなった。発見が遅く、わかったときにはもう末期だった。抗がん剤治療の大変さを目の当たりにしているだけに、他人ごとではない。今回の提携で適切な抗がん剤が簡単に選択できるようになることを期待したい。(編集担当:慶尾六郎)

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