好調の電子部品メーカー、設備投資の増額が相次ぐ
2014年6月5日 21:46
2014年1月20日施行された産業競争力強化法に基づく「生産性向上設備投資促進税制」を受け、14年度の設備投資額を増額する企業が相次いでいる。
生産性向上設備投資促進税制は、質の高い設備投資の促進によって事業者の生産性向上を図るもので、日本再興戦略の一翼を担うものとして新設された。産業競争力強化法が施行される14年1月20日から18年3月31日までの期間中、要件を満たす「先端設備」及び「生産ラインオペレーションの改善に資する設備」を導入した場合、青色申告書を提出する全ての事業者は、平成26年1月20日~平成28年3月31日までは、初年度即時償却又は5%税額控除(ただし、建物、構築物は3%)、平成28年4月1日~平成29年3月31日までは、50%特別償却(ただし、建物・構築物は25%)又は4%税額控除(ただし、建物・構築物は2%)などの税制措置を受けることができる。また、他の税制との併用はできないが、補助金との併用は可能だ。
このような背景の中、今年度の設備投資について、製造業の中でもとくに大手電子部品メーカーの大幅な伸び率が際立つ。14年3月期決算によると、電子部品各社は、スマートフォンや車載部品、産業機器、エネルギー関連分野などが好調で、加えて13年度に設備投資を抑えたことや、為替の円安効果なども相まって、総じて増収増益となった。今年度は成長戦略に転ずる企業が多く、大手が軒並み14年度の成長戦略として積極的に設備投資を行うことを発表していることから、生産性向上設備投資促進税制がそれを後押しすることで、日本経済の活性化と発展に大きく寄与することが期待されている。
日本電産が前期比37.5%増、村田製作所が17.3%増、京セラが13.1%増など、前年比2桁増が次々と発表される中、群を抜いているのがロームだ。同社は230億円を増額して前期比73%増となる548億円の設備投資を行うことを発表した。同社の強みであるアナログ・パワーデバイス関連や、自動車向け部品や産業機器ラインの強化はもちろん、同社が世界ナンバーワンメーカーを目指す小信号系ディスクリートに対してはとくに注力し、13年度から15年度の3年間で累計100億円をかけて生産設備を最新鋭設備に切り替え、少量多品種でも競合メーカーに勝る生産ラインの確保を図る。
5月5日にEU委員会が発表した春季経済予測によると、14年のEU28か国のGDP成長率は前期比の年率で1.6%、15年は2.0%になる見通しで、ヨーロッパの景気回復が確実なものとなりつつある。また、アメリカもリーマンショックから5年を経過してようやく回復傾向にあり、個人消費や雇用の改善もみられるなど、世界経済にも明るい兆しがみられており、デジタル情報家電や自動車向け電子部品などの需要は益々高まることが予測されている。新製品や新技術の開発ももちろん大事だが、競争力の高い製品を世界中に供給できる生産設備の充実は、今後の日本経済を牽引する大きな動力になるだろう。(編集担当:藤原伊織)