「LINE」成功の真実(上)

2014年6月5日 11:38

【6月5日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

全世界ユーザー4億人を突破した「LINE」。ユーザー数だけを見れば、まだ「Facebook」の12.8億人(3月末時点)の1/3程度に過ぎないが、驚くべきはその成長速度だ。「Facebook」が5年以上の歳月を要した4億人突破を、わずか3年足らずで成し遂げた。
その上、3億人から4億人を突破するまで、たったの4カ月しかかかっていない。

運営元のLINE株式会社(以下、LINE)では、今年度中に5億人突破を目指すとしているが、今夏中に5億人、2014年中には6億人を突破すると見る向きも少なくない。

こうなってくると、2015年中に10億人の大台達成も、現実味を帯びてくる。

 4日には、日本では東京証券取引所に、アメリカではニューヨーク証券取引所かナスダック市場に株式を上場する方向で検討していることも報じられた。上場が実現した場合、日本市場での時価総額は1兆円規模にのぼるとの見方もある。

これほど驚異的な速度で「LINE」が伸びている秘密はいったいどこにあるのだろうか。LINEの広報担当に話を聞いた。

 ■わずか1.5カ月で「LINE」を開発できる組織体制

 その前に、「LINE」というサービスのなりたちについて少し触れておく。同サービスが生まれたのは2011年6月。その誕生には3月11日の東日本大震災が大きく関わっている。

LINEの広報担当は、当時の動きについて次のように振り返る。

「2010年末頃から、その後予想されるスマホ市場の急拡大を見据えてスマホ向けサービスに注力する方針が打ち出された。その中で、スマホ時代に最適な人間関係・コミュニケーションのあり方や、それに対して最適なサービスがどのようなものかを模索していました」

そんなときに震災が発生。有事の際には自分の大切な人と連絡を取ろうにも電話がつながらない、無事なのかどうかすらわからない、そんな状況が顕在化したことによって、インターネット上のコミュニケーションにも変化が生じ始める。

「それまでの主流だった「Twitter」や「Facebook」といった“新たな出会い”をメインにしたセミオープン型SNSに代わり、身近な友人や家族、同僚といった“大切な人とのコミュニケーション”をサポートしてくれるクローズド型SNSが求められるようになっていた」

そのニーズをいち早くつかんだLINE(当時はネイバージャパン)は、まだ震災の影響が続く4月下旬頃から本格的に「LINE」の開発を開始。わずか1カ月半後の6月にはスマホ向けコミュニケーションアプリ「LINE」を開始した。

「LINE」誕生にまつわるこの話が、LINEという企業の気質を象徴しているだろう。ユーザーが求めるサービスをいち早く開発し、提供する。この時も、リリースから短期間の間にユーザーの要望・意見を吸い上げ、数回のアップデートを行ったという。LINEは“PDCA”を非常に高速で回せる企業なのだ。

 ■組織ぐるみで事業を加速していく

 市場環境がめまぐるしく変化するこの時代、どの企業にもスピード感が求められているはずだ。ただ、それを実際に体現できている企業はそれほど多くない。そんな中で、LINEが見せるスピード感は、非常に大きなアドバンテージになっている。

では、なぜ他社にできないことがLINEではできるのか。

「弊社では敢えて事業計画をつくらない。それが大きいと思います。決まった計画が用意されていると、どうしても計画に沿って事業を進めようとしてしまう。そうなると時間が足りずにユーザーを無視するような状況が生まれるかもしれませんし、計画に時間をかけることで競合に先を越されるなどの機会損失を招くおそれも出てきます」

開発手順を、従来的なウォーターフォール型ではなくアジャイル型で進めるのにも同様の意図がある。

「他社ではまず、企画書や計画書を作ってそれにそって開発部署が開発を行い、その後デザインするような流れが一般的です。でも、LINEでは、企画、開発、デザインを同時に行います。作りながら、要素を最良のものに絞っていく」

そのため、最終的にコアの部分だけをプロトタイプのような形でリリースし、ユーザーの反応やスタッフの意見を反映しながら完成度を上げていく手法を採ることも少なくない。

このような組織が作ったサービスだから、「LINE」はメッセンジャーアプリとしては後発だったにも関わらず、音声通話やスタンプ機能、ゲームなどの連携アプリを次々と実装、追加し、先行サービスをどんどん追い抜くことができた。
もっと言えば、どこよりも早く国際化を成功させることができたのだろう。【続】

関連記事

最新記事