崖っぷちの卸売り業、オムニチャンネル戦略で新たな挑戦
2014年6月4日 16:11
【6月4日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
レディースアパレル製造卸売会社の三澤株式会社(本社・大阪市中央区)が、代官山にセレクトショップ「Antigravite」をオープンした。ショップ名は、フランス語で「反重力」を意味するという。
扱っているブランドの比率は国内7割、海外3割で、25以上。主に20代後半〜40代前半の女性がターゲットだ。
置いてある商品には、バイヤーの「こだわり」が随所に見える。例えば、スーツの下に着用するようなカチっとしたブラウスでも、背面を見ると、三重になっている。素材は薄手のコットンだから、涼しげでいて、洒落ている。どこかワンポイント、その人らしさが打ち出せる商品をセレクトしているという。
場所は、大通りからは少しはずれたところにあるが、連日の猛暑にもかかわらず、店内が外国人客やキャリア系の女性客等で賑わっているのは、こうした保守的でありながらどこか個性的なラインナップが受けているからだろう。
1点単価は1万5000円前後でお手ごろ価格だ。記者も、夏用のビジネススーツのインナー(税込み:11880円)を購入した。前から見るとごく普通のインナーだが、背面はドレープ状の細かいタッグが入っていて、ジャケットを脱げば、また別の雰囲気の装いになる。
バイヤーのイチ押しを聞くとパリで買い付けてきたという、「ARIDZA BROSS」の黒皮のバッグを紹介された。
持つと驚くほど軽く、前側のチャック部分にはiPadが入るようになっている。床に置いても立つので、ビジネスシーンで役立つこと間違いない。税込みで4万9680円という価格だが、使い勝手を考えるとお買い得だろう。
それにしても、なぜ製造卸売り会社が、小売りの世界に進出したのか。
同社小売事業開発の片葺洋三氏は次のように出店理由を説明する。
「アパレル業界は小売店主導の企画、生産が多くなってきており、業界の流通自体がかなり変わってきています。卸売メーカーとしての役割がかなり少なくなる傾向が今後、顕著になるでしょう。いわば、アパレル業界での生き残りをかけた挑戦です」
本年の年商目標は6500万円だが、ほぼ達成できそうな見込みだという。来春には東京と大阪でさらに1店舗づつ出店する予定。3年後には10店舗を目指す。
今後は、代官山店をフラッグショップと位置づけ、「ブログ」「フェイスブック」「店舗」「雑誌掲載」などから情報を発信し、消費者とを結ぶオムニチャンネル戦略の核店舗とする。また「デザイナーとのコラボイベント、コラボ限定商品の販売」などもマンスリー企画として打ち出すなどし、多店舗化した際のプロモーションや販促活動の拠点にしていくという。【了】