【コラム 金澤悦子】お笑い芸人に学ぶ「ピンチャン力」の磨き方
2014年5月27日 02:48
【5月27日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
●ぎっくり腰で座薬を処方
とあるイベントでご一緒したことから飲み友達となった女性たちがいる。
経歴だけ見ると、あまりにもハイキャリアなために近寄りがたい存在であるが、美しくオシャレで何よりユーモアのセンスが抜群だ。
サナエ(仮名)は日本を代表するモノづくりの会社に勤めている。
30代前半、役員との海外出張を前に準備に追われていた。残業続きの日々を乗り越え、ようやく明日出発という矢先、腰に激痛が走った。
ぎっくり腰だった。
サナエに「出張をキャンセルする」という選択肢はなかった。
どうにかしてくれ・・・と医師に泣きついたところ、痛み止めの座薬を処方された。幸い、ゆっくりなら歩けた。そして痛み止めがよく効いた。
翌日、予定通りに渡米。
「取引先のトップとの交渉案件で、内容はかなりシビアなものでした。緊張してしかるべき場面なのに、真剣な顔して座ってる自分が可笑しくって。“私、坐薬入ってるんですけどって・・・」
考えてもみてほしい。
役員との同行で海外出張という責任ある仕事で、寝ずに準備してきたのに、ぎっくり腰。
「なんてついてないの!?」
と落ち込んでも仕方がないシチュエーションである。
しかしながら、彼女はそれを笑いに変えた。以降、この経験は彼女の「すべらない話」となった。ちなみに、先日の飲み会では、サナエのネタを皮切りに「ぎっくり腰」の話題で大いに盛り上がった。
「鍼灸院で置き鍼してもらったのだけど、空港の金属探知機でひっかからないかとヒヤヒヤした」
「タクシーに乗り込んだ途端にぎっくり腰。運転手さんに部屋までおんぶしてもらった」
そんなバリキャリならではの爆笑ネタを肴に、夜は更けていった・・・。アラフォーとなったサナエは部長となり、数十人の部下を束ねている。
●主観的な女性脳、客観的な男性脳
さて前回、ピンチをチャンスに変える力=ピンチャン力が
女性の幸せなキャリアづくりに欠かせないスキルであるとお伝えした。
筆者がもっとも尊敬する最強のピンチャン力集団はお笑い芸人である。
あるとき、冠番組をいくつも持つ芸人が走る姿をみたとき、筆者は目を疑った。まったく前に進んでいなかったからである。
芸能界でもモテる部類に入る彼の運動音痴ぶりを見て、あるひとつの説が筆者の脳裏に浮かび上がった。
小学校、中学校は、男子の人気は得てして運動能力と比例している。
彼のお笑いセンスは(筆者の推測の域を超えないが)運動音痴を笑いに変えたことで磨かれたのではないか。
お笑い番組で語られるネタも、その多くが一般的には「人に知られたくない話」が題材になっているケースが多い。彼ら芸人はそれらを笑いに変えてしまう。
「ってことで、みなさん、ピンチを笑いに変えましょう!」
と提案して終わりたいところだが、ひとつ触れておかねばならないのが、男女の脳の違いである。
感性分析の第一人者である黒川伊保子氏は著書「キレる女 懲りない男」で女性脳についてこのように解説している。
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右脳と左脳の脳神経細胞をつなぐ神経線維の束=脳梁が太い女性脳は、
感じる領域と顕在意識とことばの領域を恐るべき頻度で連携させて、
目の前の大切に思うもののわずかな変化も見逃さず、
その思いを察して、見事なほどに臨機応変に動く
===
男性はその対極にある。
つまり、女性はより主観的に考えやすく、男性はより客観的に考えやすい。
「仕事で女性を叱ると人格否定されたと感じ落ち込む」のもこの脳のなせる業。女性部下の叱り方に悩む男性上司は少なくない。
このような特質があってもなお、自分に降りかかる難題を「オイシイ」と捉えるにはどうしたらよいか。
筆者の答えは、自分に突っ込みを入れてくれる「大阪のおばちゃん」を自分の心の中に飼うことである。
「で、その話、オチは?」
・・・次回までの宿題とさせていただく。【了】
かなざわ・えつこ/株式会社はぴきゃり代表取締役・編集長。1991年、現株式会社リクルートホールディングス入社。94年、株式会社キャリアデザインセンターに創業メンバーとして参画。01年、日本初の総合職女性のためのキャリア転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ」を創刊し、編集長に就任。5000人以上の女性を取材する。現在、女性限定「お仕事ブログ」コミュニティサイト「はびきゃり」の運営や、オリジナル素質診断ツール「i-color」を使ったセミナーを通じて、年間300人以上の女性たちを「ココロとサイフが満たされる仕事発見」へと導く。著書に、「ハッピーキャリアのつくりかた」(ダイヤモンド社)等がある。