子宮筋腫の内視鏡手術ががんをまき散らす 手術ができなくなる可能性も

2014年5月25日 13:43

 子宮筋腫は女性の子宮に発生する良性の腫瘍である。良性とはいってももちろん放置しておくことはできないわけで、女性にとって非常に大きな問題だ。しかし、子宮筋腫の内視鏡手術の際に、使用される器具ががんを腹部内でまきらし、悪化させる恐れがあるということが判明した。

 一般社団法人 日本産科婦人科内視鏡学会理事長の吉村泰典氏は21日、同会のHP上で「子宮筋腫がある女性の腹腔鏡下の子宮摘出術または子宮筋腫核出術に電動モルセレータを使用した細切除去術を実施した場合、想定されていなかったがん組織、特に子宮肉腫を腹腔内に播種させるリスクがある」と発表した。

 2014 年 4 月 17 日、腹腔鏡下の子宮摘出術または子宮筋腫核出術に用いる電動モルセレータという器具を使用した細切除去術に関して、米国食品医薬品局(FDA)から安全性通知が発行された。つまり、症候性の子宮筋腫患者を治療する際は、医療従事者と患者は他の選択肢を慎重に考慮すべきであるということ。

 現時点で FDA は、子宮筋腫に対する腹腔鏡下の子宮摘出術または子宮筋腫核出術に電動モルセレータを使用した細切除去術を施行することを推奨しない、としているという。これを受けて電動モルセレータの製造元であるジョンソン・エンド・ジョンソン社は電動モルセレータの販売活動を世界的に中止したため、日本でも従来の方法による腹腔鏡下子宮筋腫核出術が行えない可能性が出てきた。

 日本産科婦人科内視鏡学会では、会員に対してこの状況を速やかに通告し改めて注意喚起した。さらに、国民に安全で確実な手術を提供するという観点から21日緊急の対策会議を開催したという。

 現状では、国内における電動モルセレータの使用は、そのほとんどが子宮筋腫核出術に対する使用であり、その患者の多くが生殖年齢の女性であること、術前に MRI 等の検査で悪性の可能性を除外することが一般化している。このことから、結果的に悪性であった頻度は極めて低いものと考えられる。

 しかし、開腹、腹腔鏡下を問わず術前検査にて確定診断は不可能であり、電動モルセレータの使用により予後に影響を与えるとすれば見過ごせない事態が生じる恐れがあるという。

 そこで学会では、調査委員会を立ち上げ、国内での状況を早急に調査すると同時に、ガイドライン作成を決定した。また、今後の電動モルセレータの使用に関しては、悪性の除外診断に最大限努めること、診断不可能な悪性病変のリスク及び予後を悪化させるリスクに対してインフォームドコンセントを得る事を再確認したという。

 手術ができなくなる可能性があるとは大問題だ。早急な問題終息を願いたい。(編集担当:慶尾六郎)

関連記事

最新記事