「だいち2号」相乗りの小型衛星4機も成功 順調な旅立ち

2014年5月25日 18:30

  三菱重工と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24日、「だいち2号」を搭載したH-IIAロケットの打ち上げに成功した。また、「だいち2号」と共に搭載されていた4機の小型衛星についても分離に成功し、その後すべての衛星が正常に飛行していることが確認されたと発表した。

  今回の打ち上げではロケットの余剰能力を活かし、「RISING-2」、「UNIFORM-1」、「SOCRATES」、「SPROUT」の4機の小型衛星が搭載されていた。これらは「だいち2号」の分離後に準備ロケットから分離され、軌道に送り込まれた。

  RISING-2(日本語名は「雷神2」)は東北大学と北海道大学が開発した衛星で、東北大学が衛星の筐体を、北海道大学がセンサー機器を開発した。予算や関わった人員はほぼ半々だという。解像度5m、また多波長で地球を観測できる高性能な望遠鏡を搭載している。また高精度の三軸姿勢制御が行える機構を積んでおり、定地点の連続撮影にも挑戦、さらにスプライトと呼ばれる高々度の放電発光現象の観測も行う。衛星の寸法は500 x 500 x 500mmで、打ち上げ時の質量は約43.2kg。

  打ち上げから約24分38秒後にロケットから分離され、その後東北大学が持つアンテナで、衛星からの信号の受信に成功した。前号機「雷神」は、打ち上げは成功したものの、不具合を起こし、十分な観測ができないまま運用を終えてしまったため、今回はそのリベンジに挑む。

  UNIFORM-1は和歌山大学を中心に、東京大学、東北大学、東京理科大学、首都大学東京、北海道大学、次世代宇宙システム技術研究組合、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)が共同開発した衛星で、森林火災の検知を目的としている。また、UNIFORMプロジェクトは「汎用的に利用できる超小型衛星バス・運用システムの確立」、「標準化した衛星開発プロセスによるキャパシティビルディングの展開」、そして「そのキャパシティビルディングを通じた海外市場の獲得」といった目標が掲げられており、海外の宇宙新興国との交流や、衛星の商業化にも重点が置かれている。衛星の寸法は500 x 500 x 500mmで、打ち上げ時の質量は約50kg。

  打ち上げから約28分48秒後に分離され、その後和歌山大学が持つアンテナで受信に成功している。早ければ26日に画像を撮影し、27日も公開されるとのことだ。

  SOCRATESは株式会社エイ・イー・エスと、情報通信研究機構(NICT)、JAXAが開発した衛星で、エイ・イー・エス社が開発した小型衛星の標準バスを使用した最初の衛星で、そこにJAXAが開発したMESA(メサ)と呼ばれる超小型地球センサーと、NICTが開発した光学通信を行う機器を搭載、宇宙での実証試験を行う。寸法は499 x 498 x 441mmで、打ち上げ時の質量は48kg。

  打ち上げから約32分58秒後に分離され、こちらも信号の受信に成功した。

  SPROUTは日本大学と株式会社ウェルリサーチが開発した衛星で、寸法は210 x 214 x 220mmで、質量は7.1kgと小さいものの、軌道上で厚さ12.5μm、一辺1.5mの正三角形の、とても薄い膜を展開する。衛星の目的は、まずこの膜が展開できるかの実証にあり、それにより将来の太陽光発電衛星やソーラーセイルへの利用が期待されるという。さらに膜を広げたことによって軌道がどのように落ちてくるかを調査し、スペースデブリの早期落下などに役立てることも期待されているという。また、これほどの小さな衛星の姿勢制御技術の実証や、アマチュア無線家による、衛星に搭載されているカメラの使用なども計画されている。

  打ち上げから約32分58秒後に分離され、こちらも信号の受信に成功した。

  SPROUTは、もともと分離が確認できる位置にカメラが搭載されていなかったため、分離を直接目で確認することはできなかったが、予定通り打ち上げから37分5秒後に分離されたと見られる。国内外の複数のアマチュア無線家から、衛星からの信号を受信できたとの報告があり、成功が確認された。また25日には衛星へのアップリンクが通ったことが発表され、正常に機能していることが確認された。膜面の展開は来年1月を予定しているという。

  4機の衛星のうち、RISING-2とUNIFORM-1、SOCRATESはJAXAが開発したPAF239Mと呼ばれる分離機構から放出される。この機構はロケットからの分離信号によって火工品に点火、発生したガスの圧力でボルトを切って締結バンドを外し、バネの圧力で宇宙空間に放出するという仕組みだ。

  一方、SPROUTは独自の分離機構が用いられたが、これはSPROUTの寸法が20cm立方で、従来の10cm立方(キューブサットと呼ばれる超小型衛星の標準サイズ)の分離機構が使えなかったこと、また自作することで、今後多種多様な衛星が出てきてもマイナーチェンジで対応できるようにしたかったため、とのことだ。

  今回のような、小型衛星に打ち上げの機会を提供する取り組みは2006年から行われており、宇宙開発の利用促進や人材育成を目的に、大学や民間企業から衛星を募集、2009年の「いぶき」の打ち上げで6機の公募小型副衛星が打ち上げられたのを皮切りに、過去18機の衛星が打ち上げられてきた。さらに今年末に予定されている「はやぶさ2」の打ち上げでも、3機の搭載が予定されている。またこれまでは無償で打ち上げ機会が提供されてきたが、今後有償での搭載サービスも始まることになっており、小型衛星の開発や利用がさらに進みそうだ。

 (冒頭の写真は、上から、RISING-2、UNIFORM-1、SOCRATESの、それぞれの分離の瞬間)

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