14の厚生年金基金で計106億円の損失が発生

2014年5月22日 15:10


*15:10JST 14の厚生年金基金で計106億円の損失が発生
東京都港区の投資運用会社「プラザアセットマネジメント」に資産の運用を委託していた14の厚生年金基金で、計106億円の損失が発生していたことが20日、厚生労働省の調査で分かった。
同社は、米国で生命保険証券を買い取り、契約者にかわって保険料を支払う代わりに、契約者が亡くなれば保険金を受け取る「ライフセトルメント」と呼ばれる取引をする2つのファンドに投資していたが、2ファンドとも2008年末ごろから資金繰りが悪化していた。それにも関わらず、顧客へ十分な説明をすることなく勧誘していたとして、昨年7月、金融庁から金融商品取引法違反で業務改善命令を受けた。その後、各基金に「ファンドの資産価値がゼロになった」と通知した。
これを受け、厚労省が各基金に聞き取り調査を行ったところ、少なくとも中小の運輸業や建設業など14の基金が計約106億円を投資していたことが判明したという。
田村憲久厚労相は20日の閣議後記者会見で、各基金の総資産額に占める損失額の割合が目立って高い状況ではないとして、「一部の基金を除き、財政的な影響は限られていると思うが、大きな問題であるため、我が省としてもしっかり調査しなければならないと思っている」と述べた。
また、厚労省では「投資運用先をしっかり見極めてほしい」と注意を呼び掛けている。
厚生年金基金は高齢化に伴う掛金減少と給付金増大などにより財政が悪化していることに加え、バブル崩壊後の株価低迷などで積立金の運用も悪化している。また、2012年に発覚したAIJ投資顧問による詐欺事件で多くの基金が預けていた計約1600億円のほとんどが消失したことで、より一層運営が厳しくなっている。そのため、厚生年金基金のうち74基金が今年度から来年度にかけて、深刻な積立金不足の基金に適用される「特例解散」をする方向で調整していることも厚労省の内部資料で分かっている。解散を申請すると、公的年金である厚生年金は予定通り支給されるものの、これに上乗せされる企業年金は支給されなくなる。企業年金は標準で月に約7千~1万6千円、受給期間は10~20年であるため、個人への影響は決して小さくはない。
運用には必ずリスクを伴うし、思わぬ事態が起こることもある。しかし、運用結果に責任を伴わないから、無責任な運用が行われてしまうのも事実ではないだろうか。しっかりとした知識と経験を持った担当者による運用が望まれる他、小手先の法改正だけでなく抜本的な構造改革も必要な時期ではないかと思われる。《YU》

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