東電・福島第一原発の地下水を海に初放出
2014年5月21日 20:31
東京電力は21日、福島第一原子力発電所の汚染水対策の一つとして計画している「地下水バイパス」を初めて実施し、約560トンの地下水を海へ放出した。放出された地下水の水質分析では、放射性物質の濃度はいずれも放出基準を下回っていることを確認し、地元自治体と漁業協同組合連合会は放出を了承した。同社では、地下水バイパスによって、一日当たりおよそ400トンずつ増え続けている汚染水のうち、100トンほどを減らせるとしている。
地下水バイパスは、地下水が、原子力建屋内部のメルトダウンした(熱で溶け落ちた)燃料に接触して汚染水となることを防ぐ措置である。地下水が建屋に浸入する前に、山側に設けられた井戸から汲み上げ、タンクに一時的に貯留し、安全を確認した上、配管を通して海に放出する対策である。
今回放出されたのは、4月に汲み上げられた地下水で、国の日本原子力研究開発機構と、東電及び第三者機関の「日本分析センター」が、放射性物質の濃度を測定した。その結果、1リットル当たり、トリチウムは基準値1500ベクレルを大幅に下回る220~240ベクレル、セシウム134は基準値60ベクレル、セシウム137は同90ベクレルをそれぞれ大幅に下回る1ベクレル以下の値が測定された。
福島第一原発の汚染水対策としては、地下水バイパスとともに、1~4号機の周りの地盤に「凍土遮水壁」をめぐらせて地下水の浸入を防ぐ対策や、「ALPS」と呼ばれる放射性物質除去装置の運転などが計画されているが、いぜん課題が多いようだ。(記事:南条 誠・記事一覧を見る)