「公的制度で高齢者を優遇しすぎ」 20代の6割、60代以降も3割が認識

2014年5月21日 09:25

 高齢者に対する認識を調査したところ、「健康面」では弱者であるものの、「経済的」「能力面」では必ずしもそうではないと考えている人が多いことがわかった。高齢者に期待する役割では、規範やマナーを実際に体現することや若い世代との交流などが求められていた。「公的制度で高齢者を優遇しすぎ」「高齢者の政治に対する発言力が大きすぎる」と考える割合は若い世代ほど多かったものの、高齢者自身も30~40%が同様に考えるなど、次世代への配分を大きくすべきとの認識が広がっている傾向も分かった。老後のライフスタイルの充実や高齢者の自立について調査・研究・提言する、特定非営利活動法人「老いの工学研究所」が調査した。

 調査では20~87歳まで851名から回答を得た。

 高齢者を弱者と捉えるかどうかについて、「健康面で弱者」と捉える人はあらゆる年代で8割を超えた一方で、「経済的に弱者か」「能力面で弱者か」については70歳代で半数程度、80歳代でも6割にとどまった。経済面、能力面で弱者と捉える人の割合は若い世代ほど低くなっており、若い世代ほど高齢者がお金や能力を持つ人と考える傾向にあった。

 高齢者の役割については、「IT機器など新しい製品を使いこなすべき」と考える人は20歳代で3割、30歳代以降のすべての世代でも半数程度にとどまった。反対に、規範やマナーを教えるだけでなく実際にやってみせること(体現)や、若い世代との交流を持つこと(交流)、知識・技術や伝統・慣習を次世代へ伝えていくこと(伝承)を、高齢者の重要な役割と捉える人が多かった。

 高齢者が「もっと消費や投資を行うべき」と考えるのは20・30歳代で7割前後と高い割合を占めるのに対して、高齢者自身は3割程度と、投資や消費に消極的であることも分かった。現役世代は高齢者を「経済的余裕がある」と見るのに対して、高齢者自身は「先行きの経済的不安を感じる」「余裕があっても財産を残すことを優先」「お金の使い道があまりない」など多様であり、世代間で認識にギャップがあった。

 「公的制度で高齢者を優遇しすぎ」「高齢者の政治に対する発言力が大きすぎる」とした割合は若い世代ほど多くなっており、社会保障の世代間格差などの問題の一端がうかがえる結果となった。ただし、60歳代以降で「公的制度で高齢者を優遇しすぎ」「高齢者の政治に対する発言力が大きすぎる」とした人も30~40%に上り、次世代への配分を大きくすべき、次世代の意見を取り入れるべきと考えている高齢者が少なくないことは注目に値する。

 「生涯現役でいるべき」は40歳代で65%まで上昇するが、50歳代以降は50%前後を推移している。「後進に道を譲るべき」が4割程度、「悠々自適でいるべき」も7割程度と世代に関わらず一定の割合を占めており、政府が進める生涯現役の考え方は必ずしも浸透していない現状が明らかとなった。

 調査結果を受けて同研究所では「高齢者を一概に弱者とするのではなく、それぞれの強味を発揮してもらえる社会へ」「引退・隠居という全時代モデルからの脱却」「特に高齢男性について、定年後のキャリアや人生設計について考えてもらう機会が必要」などと提言している。(編集担当:横井楓)

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