【コラム 飛田博】法曹はがんばらなければならない

2014年5月21日 00:02

【5月21日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

最近、法曹(裁判官・検察官・弁護士)に対する世間の評価はとても厳しいものがあります。

(1) まず、裁判所に対してですが、最近、元エリート裁判官の瀬木比呂志さんが『絶望の裁判所』(講談社現代新書)を出版し、裁判所の内部の状況を生々しく書いています。2000年以降の裁判所は、最高裁事務総局の統制により、組織、裁判官ともに劣化していて、裁判官は、もはや国民の権利を守る人ではなくなり、上の顔色ばかりを伺う共感力に乏しい人ということです。最近は、FaceBookで自分の意見や情報を配信している裁判官もいるので、必ずしも、裁判官の全員がこの本に書いてあるとおり、ガチガチに統制されているとは思いませんが、実は、弁護士の中でも一番裁判官を信頼していないのが裁判官出身の弁護士だったりしますので(笑)、一面の真実ではあるのでしょう。しかし、弁護士というのは裁判所の権威のもとで仕事をしている面がありますので、この本はあまりクライアントには読んで欲しくないですね。

(2) 次に、検察庁。検察庁については、厚生労働省の村木さん事件において、特捜検事が証拠を偽造していたことが発覚して、信用が失墜した面がありますが、最近のPC遠隔操作事件の捜査手法や最後の最後まで被告人の保釈に抵抗した態度などについても、マスコミから批判されています。少し前まで、検察というと『巨悪を撃つ』というように、正義の見方というイメージでしたが、今は、『国策捜査』などという言葉に象徴されるとおり、完全に権力側というイメージです。

(3) では、弁護士はどうか? これについては、弁護士が依頼人(高齢者が多い)の預り金を着服したとか、電車内で痴漢をしたとか、本当に恥ずかしい報道ばかりされている状態であり、少々情けないのですが、裁判所や検察庁によりも、さらに『絶望的』な状態のように思います。

このような状態が反映しているのか、司法統計によると、全国の地方裁判所が新たに民事・行政事件を受理した件数は、平成15年度が約135万4900件だったのに、平成24年度は約66万8700件と約半分になっています。我々弁護士が関与することの多い地方裁判所の通常訴訟の件数も、平成21年度の約23万5500件から平成24年度の約16万1300件とここ4年間で32%も減少しています。

もちろんこの事件数の減少は、高齢化社会(少子化社会)の進展なども影響していると思われますが、私としては、司法全体に対するネガティブなイメージや、実際の使い勝手の悪さ(役に立たなさ)なども影響しているように思うのです。日本の法曹界にとっては、今は本当にピンチだと思います。

しかし、ちょっと唐突かもしれませんが、「ピンチはチャンス」です。このようなときこそ、物事を変えるチャンスです。もっと司法が人々の役にたって、利用してもらえるよう、我々法曹は、もっともっと頑張りましょう!【了】

飛田博(とびたひろし)/弁護士(ウイズダム法律事務所パートナー弁護士)
1992年3月早稲田大学法学部卒業。94年10月に司法試験合格。1997年4月に東京弁護士会弁護士登録し、五月女五郎法律事務所へ入所。2000年に西村総合法律事務所(現:西村あさひ法律事務所)へ入所後、2010年8月に独立して飛田博法律事務所を開設。2010年11月ウイズダム法律事務所へ合流。モットーは「フットワーク軽く迅速に、しかも高品質」、趣味は読書(小説・ノンフィクション)、ジョギング、スポーツ観戦。ウイズダム法律事務所ブログより、本人の許可を得て転載。

関連記事

最新記事