ムーティ&ローマ歌劇場、日本公演を前に開幕記者会見を開催

2014年5月20日 12:08

ムーティ&ローマ歌劇場、日本公演を前に開幕記者会見を開催

 リッカルド・ムーティ率いるローマ歌劇場が、5月19日に日本公演 開幕記者会見を開催し、リッカルド・ムーティ終身名誉指揮者、カルロ・フォルテス総裁、アレッシオ・ブラッド芸術監督、高橋典夫NBS事務局長が出席した。

 今回の演目は、ヴェルディのオペラから『ナブッコ』と『シモン・ボッカネグラ』が上演される。ムーティは「ヴェルディは書きたかったことを裏切られて演奏されている作曲家。昔から歌手の方が指揮者よりも強い権限を持ってしまっており、ヴェルディの作品を演奏される際も、音楽的なことよりも歌手の技巧に興味を持ち、高く評価しすぎている傾向がある。ヴェルディが遺した手紙に「指揮者も歌手も、私が書いたとおりに、何も変えず、何も加えずに演奏してほしい」と書かれているように、ヴェルディの音楽的な目的や意図を過剰な演出で邪魔してはいけないと思っている。」と述べた。そして、今回の日本公演については「非常に詩的であり、なおかつ観客の皆様にストーリーを物語っていくような演出になっている。私たちは、オーケストラも歌手も劇場自体も、ヴェルディに対する愛情と忠誠と尊敬をもって、この音楽に取り組んでいる。今日、失われつつある演奏のアイデンティティを、再度皆様にお伝えしたい。」と続けた。

 また、会見場の後方にはナブッコの演出家であるジャン=ポール・スカルピッタも出席しており、「今、マエストロ・ムーティがおっしゃったことには、私も非常に賛同しています。私達演出家にとっても、マエストロは多くのことを教えてくださいました。やはり、音楽を深く掘り下げることが、どれだけ大事かを感じました。」と語った。

 今回のローマ歌劇場来日公演では、85名のオーケストラ、90名の合唱、17名のソリスト、70名ほどのスタッフの総勢約250名が来日しており、舞台装置や衣装についても12台のコンテナが運ばれた。フォルテス総裁は、「オペラはイタリア人にとって、アイデンティティと言っても過言ではありません。オペラは過去のものではなく、これからもどんどん発展を続けていき、成長させていく芸術だと思っている。」と述べた。

 2013年、劇場修復などによる多額の出費が重なったことで、財政危機が報じられたローマ歌劇場。未来へ継承していくための課題について記者から問われると、ムーティは「世界中の人が、イタリアが倒れかけていると言っても、帽子の中からウサギを取り出すのがイタリア人なのです。今、世界中が経済危機に瀕していますが、イタリア人からオペラを取り上げるのは不可能。日本人から富士山がなくならないように、イタリアからオペラがなくなることはありません。」と、会場の笑いを誘った。

 ローマ歌劇場の来シーズンは、『アイーダ』での幕開けが予定されているという。ムーティは「アイーダは、とても内面的な作品。ヴェルディは一度もエジプトに行ったことがなかったが、凱旋のシーンもナイル川の美しさも、音楽にすべて表れている。天才であれば、私達それぞれが持っている想像の世界を、このように詩的に表現できるのだと感じる。」と、再度、偉大なる作曲家への畏敬の念を示した。

◎公演情報【ローマ歌劇場 2014年日本公演】 ■G.ヴェルディ作曲『ナブッコ』 指揮:リッカルド・ムーティ ジャン=ポール・スカルピッタ 日程:2014年5月20日(火)東京文化会館    2014年5月30日(金)NHKホール    2014年6月1日(日)NHKホール 主な配役:ナブッコ:ルカ・サルシ イズマエーレ:アントニオ・ポーリ ザッカーリア:ドミトリー・ベロセルスキー アビガイッレ:タチアナ・セルジャン フェネーナ:ソニア・ガナッシ

■G・ヴェルディ作曲 『シモン・ボッカネグラ』 指揮:リッカルド・ムーティ 演出:エイドリアン・ノーブル 日程: 2014年5月25日(日) 東京文化会館 2014年5月27日(火)東京文化会館 2014年5月31日(土)東京文化会館 主な配役:シモン:ジョルジョ・ペテアン アメーリア:エレオノーラ・ブラット ガブリエーレ・アドルノ:フランチェスコ・メーリ フィエスコ:ドミトリー・ベロセルスキー パオロ・アルビアーニ:マルコ・カリア

More info: http://roma2014.jp/

photo : Yasuko Kageyama / Teatro dell'Opera di Roma

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