【コラム 金澤悦子】女たちよ、今すぐ目標を捨てよう
2014年5月12日 22:50
【5月12日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
●アラサー女子独特の心の揺れの正体
「私の人生、こんなハズではなかった・・・」。
A子は結婚後、なかなか子どもができないため、不妊治療を行うことにした。治療に専念するために仕事は辞めた。次こそは・・・と治療を続けたが、望む結果は得られなかった。気づけば40代半ばに差しかかっていた。
B子は育休から職場復帰し、張り切っていた。義理の両親と同居していたため、長女が寝た後に帰宅することも多くなっていった。しかし、ある朝、幼い娘が涙を流しながら懇願した。「ママ、そばにいて・・・」。B子は大好きだった仕事を辞め、派遣で働きはじめた。現在40歳。契約が切れて次の仕事の斡旋を待っているが、声がかからないまま半年過ぎた。
一般的にキャリアアップしたいなら3年後、5年後の目標を持てと言われるが、30歳前後の女性にとって、これほど酷なことはない。というのも、結婚相手が転勤族であれば、近い将来について行くことになるかもしれない。
子どもが欲しいと思えば、婦人科通いをするのは妻だ。
ちなみに、筆者の周りの妊活中の女性たちを見ていると、平日の日中に診察に行かなければならず、待ち時間も長いため、泣く泣くキャリアを中断するケースは少なくない。そして、子どもができたら自分の時間はますます減る。
独身であっても、「結婚するかもしれない・・・」と、たとえ彼氏がいなくても上記のような妄想を繰り広げる。
現実的なところでは、親のことも気になるところだ。地方出身者であれば、実家に帰らなければならない事態に思いを馳せる。
つまり、働く女性の人生は不確定要素が多すぎる。予測不能の靄の中で30歳前後の働く女性の心は揺れ動いている。
では、どうすればよいか。
これまでに1万人以上の働く女性たちに取材をしてきた結果、ひとつの答えにたどり着いた。それは、「流れに身を任せる」ことである。
これを神戸大学大学院の金井壽宏教授は「キャリアドリフト」と名付けている。ドリフトとは「漂流する」という意味だが、予期せぬことや偶然の出来事、出会いを自分にとってのチャンスととらえることから、
筆者はこれをピンチをチャンスに変える力=ピンチャン力と呼んでいる。
●偶然を味方につける
もう20年ほど一緒に仕事をしているビジネスパートナーが、一昨年乳がんになった。リンパにも転移が見られ、楽観視はできない状況であったが、彼女が選んだ道は「働く独身女が乳がんになると何が起こるのか」を自分を実験台にして実況中継することだった。
辛い抗がん剤で食欲が減退したときも、彼女の手にかかると「抗がん剤の楽々食材リスト」になり、髪が抜け落ちたときも、これ幸いとプチプラのウイッグで遊んでみたり。
今はSNSがあり、人と人がつながりやすい。抗がん剤で弱気になったとき、同級生や友人知人からの激励に生きる勇気が湧いたという。自分は多くの人に支えられて生きていたのだということを実感し、ガン患者だというのに、これまでにないほどの幸せを味わった。
さらに、彼女のブログが多くの女性から支持され、書籍化が決まった。これぞ、病気をチャンスに変えたピンチャン力のなせる業。
冒頭に戻るが、目標はあってもいいが、それに固執しすぎると、できなかったときの落胆は大きい。また、自分の可能性を狭めてしまうことにもなりかねない。しかし、それに気づけたら、そこからまたリベンジできるのだから、人生はおもしろい。
次回、ピンチャン力についてもう少し詳しくお伝えしていく。【了】
かなざわ・えつこ/株式会社はぴきゃり代表取締役・編集長。1991年、現株式会社リクルートホールディングス入社。94年、株式会社キャリアデザインセンターに創業メンバーとして参画。01年、日本初の総合職女性のためのキャリア転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ」を創刊し、編集長に就任。5000人以上の女性を取材する。現在、女性限定「お仕事ブログ」コミュニティサイト「はびきゃり」の運営や、オリジナル素質診断ツール「i-color」を使ったセミナーを通じて、年間300人以上の女性たちを「ココロとサイフが満たされる仕事発見」へと導く。著書に、「ハッピーキャリアのつくりかた」(ダイヤモンド社)等がある。