タカラバイオが米国でがん治療薬の臨床実験へ

2014年5月11日 12:29

 タカラバイオ<4974>は、米国でがん治療薬HF10の第Ⅱ相臨床試験を実施するため、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)に臨床試験実施申請資料(IND; Investigational New Drug)を提出した。

 この試験では、治癒切除不能または転移性悪性黒色腫を対象とし、HF10とIpilimumab(商品名:YERVOY)を併用投与した際の有効性、安全性、免疫学的検査などの評価を行う予定。また同社施設で製造したHF10製剤を投与する計画だ。今後、試験実施施設の治験審査委員会(IRB; Institutional Review Board)などによる審査を経て、被験者登録を開始する。

 同社は、2010年11月にHF10事業を株式会社エムズサイエンスより取得した。HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示す。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれている。

 Ipilimumabは、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体。2011年5月に米食品医薬品局(FDA)に承認されて以来、世界40カ国以上で進行悪性黒色腫の標準治療薬となっている。商品名「YERVOY」として販売されている。

 悪性黒色腫とは、悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種。メラノーマとも呼ばれている。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられている。

 第Ⅰ相臨床試験では、HF10を投与した際の安全性、体内動態および腫瘍縮小効果等の評価を目的として実施し、良好な安全性が確認されたという。また、一部の症例では、腫瘍の増大が抑制され、腫瘍免疫効果を示唆する血中成分の変動が観察された。

 今回の対象患者は、治癒切除不能または転移性悪性黒色腫患者。評価項目は有効性(腫瘍縮小効果、無増悪生存期間、1年生存率など)、安全性、免疫学的検査。投与方法はHF10腫瘍内投与とIpilimumabの併用投与である。

 タカラバイオは、HF10の2018年度の商業化を目標としており、引き続き臨床開発を推進していく方針だ。(編集担当:慶尾六郎)

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