子育てから、総タイル貼りまで 提案力勝負の住宅市場最前線
2014年5月10日 20:12
2020年の開催が決まった東京オリンピック。東京都が推測している経済効果は3兆円に上るといわれているが、実際はそれ以上とする見方も多いようだ。オリンピック招致が成功したことにより、20年まで景気は上向くと見られている一方で、建築業界ではオリンピック関連施設建設に伴って、資材の高騰や人材不足が深刻化している。加えて、今年と来年で、二段階で引き上げられる消費税増税や、人口減少による市場の縮小、需要の減退が懸念されており、住宅市場は今まさに試練の時といえる。
これらの逆境に対応すべく、住宅メーカー各社も様々な商品を展開して需要の喚起に励んでいる。面白いのは、いずれのメーカーの商品も単純に価格を下げて売り込みをかけるのではなく、プラスアルファの付加価値で、魅力のあるライフスタイルを提案していることだ。
太陽光発電やスマートハウスなどの創エネや省エネ住宅は今の住宅市場のトレンドだが、それ以外にも、例えば積水ハウスでは、手が届きやすい、転びにくいなどの子供のためのスマートユニバーサルデザイン取り入れた子育て空間「コドモイドコロ」を提案していたり、パナホームでは、パナソニックグループの総合力を活かした、生活に心地よい照明の提案「くらしとあかり」など、メーカー独自のアプローチを行っている。ただ、大手メーカーはまだしも、資本力と組織力で劣る中小の地方工務店にとっては、なかなか独自色を出すのは困難だ。
そんな中、アキュラホームが主宰する工務店ネットワーク「ジャーブネット」も、大手メーカーに負けない面白い提案を行っている。ジャーブネットは今年、参加企業が導入している工務店経営支援システム「アキュラシステム」が20周年を迎えることを記念して、磁器タイルを用いた総タイルの家を、大幅にコストダウンして、1000万円台からの価格帯で販売することを発表した。
総タイル貼りの家は耐久性に優れ、高級感あふれる佇まいが大きな魅力だ。経年劣化によるメンテナンスコストを大幅に削減することで、同社試算によると、一般的なサイディングと比べて、30年間で約150万円のコストダウンが見込めるという。しかしながら、当初の建築費用が高くなってしまうので、欲しくてもなかなか手に入れられないのが現状だった。ジャーブネットは日本最大規模の工務店ネットワークのスケールメリットを活かして共同仕入れを行うことで、大手メーカーでも難しい低価格帯からの総タイルの家を実現することで、より豊かな暮らしの提案を行っている。
住宅業界にとっては厳しい時代かもしれないが、その分、企業の努力で魅力的な商品が次々と発表されており、購入者側からみると、今が買い時といえるかもしれない。15年の消費増税を控えて、また駆け込み需要が懸念されているが、単純に価格とブランドだけで早急に判断するのではなく、一生に一度の大きな買い物だから、本当に価値のある、メーカーの提案がきっちりとなされている住まいを選びたいものだ。(編集担当:石井絢子)