慶應大など、腸内で細菌と免疫が共生する仕組み解明へ

2014年5月5日 20:21

 慶應義塾大学の長谷耕二教授らは、マウス実験によって腸内で菌を攻撃する免疫を制御する仕組みを明らかにした。

 胎児は母体内にいるときは無菌状態であるが、出生後100兆個もの菌にさらされ、腸内には菌が定着することになる。この際、菌を攻撃する免疫系がどのように制御され、菌と免疫系が共生できていたのかは明らかになっていなかった。

 長谷教授らは、マウスを使った実験で、制御性T細胞という免疫系の働きを抑える細胞を増殖させるためにはUhrf1という分子が必要であることを突き止めた。

 細胞は全ての遺伝情報を持っているが、実際には筋肉や内蔵や手足などそれぞれの部位に関係する遺伝子のみが働く(発現する)。Uhrf1は、このように発現する遺伝子を制御する「エピゲノム制御因子」の一つである。

 今回の研究ではUhrf1の不足によって、細胞周期制御因子が増加し制御性T細胞の増殖が起きにくくなっていることや、Uhrf1が欠損しているマウスは免疫が過剰反応することで慢性大腸炎を引き起こすことも明らかにしている。

 今回の研究成果は、腸内細菌と免疫系のバランスが崩れることによって発症する炎症性腸疾患の治療に役立つことが期待される。

 この研究成果は、4月28日付の英国科学誌「Nature Immunology」オンライン速報版に掲載された。

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