基礎生物学研究所、精子幹細胞は異なる二つの状態を行き来するという新説を提唱

2014年5月4日 21:51

 基礎生物学研究所の原健士朗助教・吉田松生教授らは、マウス実験により、精子幹細胞は「As細胞」であり続けるというこれまでの説を覆す新説を発表した。

 精子幹細胞とは、精子を作るための元になる細胞のことで、これまでは一つひとつがバラバラの状態で存在していて(As細胞)、2つ以上の細胞が繋がると(合胞体)、幹細胞としての能力を失うと考えられてきた。

 本研究グループは、精子になる前の細胞(精原細胞)を生きたまま観察するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用する独自の観察手法を開発していたが、今回はそれをさらに改良して、マウスの精子幹細胞の性質を調べた。

 その結果、As細胞は細胞分裂して合胞体を作ること、そして合胞体はバラバラになってAs細胞になることがそれぞれ観察された。また、精子を作るためにはAs細胞が細胞分裂し合胞体がバラバラになることの繰り返しが重要であることが、数理モデル解析によって明らかになった。

 この結果を踏まえ、同グループは「精子幹細胞は、As細胞と合胞体という二つの状態を行き来し、どちらの場合も幹細胞として働く」という新説を提唱した。

 精子幹細胞の枯渇は不妊の原因にもなるため、今回の発見と新説の提唱は、医学的にも重要な意味を持つ。

 研究チームは、今回の成果を基盤として、ヒトをはじめ他のほ乳動物の精子幹細胞の実体が解明され、将来的に男性不妊の原因究明や治療薬の開発などに貢献することが期待されるとしている。

 なお、5月2日発光の米科学雑誌「Cell Stem Cell(セルステムセル)」に、本研究成果は掲載されている。

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