東北大、震災被災者の脳体積と自尊心の相関を発見 PTSDの治療に期待

2014年4月30日 17:50

 東北大学の関口敦講師・川島隆太教授らは、東日本大震災直後に観察した被災者の脳の変化を1年間追跡調査し、その結果を発表した。

 同研究チームは、震災の前後にも、仙台周辺在住の大学生を対象に、脳の変化について調査を実施していた。その際は、脳内の前帯状皮質(血圧や心拍数の調整に関係)の脳体積が減少している被災者はPTSD症状を生じやすいこと、PTSD発症と共に眼窩前頭皮質(意思決定や認知に関係)の脳体積が減少することを明らかにしていた。

 その後、1年間の追跡調査を実施した結果、「震災時と比べて、眼窩前頭皮質が増加」「自尊心の強い人ほど、左の眼窩前頭皮質が増加」「右の海馬(記憶に関係)が減少」といった変化が見られた。

 眼窩前頭皮質は条件づけ恐怖記憶の消去に関与していることから、恐怖記憶の消去が回復過程の背景に存在していたことが示唆された。また、自尊心はPTSDの予防因子であるとされており、脳形態変化の回復を予測する因子として特定されたことからも、過去の研究を指示する結果となった。

 右海馬の体積減少については、今震災ストレスが青年層における海馬体積の加齢性の変化を促進してしまった可能性を示唆しているという。

 この研究結果は、PTSDが回復するメカニズムの解明に繋がるため、予防や治療にも役立つと期待されている。

 なお、今回の研究成果は4月29日付でMolecular Psychiatry誌の電子版に掲載されている。

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