【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】日銀会合など重要イベント目白押し、GWや3月期決算発表で波乱含み

2014年4月27日 13:48

■株式・為替相場展望(4月28日~5月2日)

  来週(4月28日~5月2日)の株式・為替相場は、大勢としてはレンジ相場だが、29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、30日の日銀金融政策決定会合・展望リポート公表、米第1四半期GDP速報値、5月2日の米4月雇用統計といった重要イベントが目白押しであり、GWの閑散や3月期決算発表などで波乱含みだろう。

  前週(4月21日~25日)の日本株は方向感に乏しい展開だった。主要株価指数の週間騰落率を見ると、日経平均株価は87円01銭(0.60%)下落して週末25日の終値は1万4429円26銭、TOPIXは3.73ポイント(0.32%)下落して週末25日の終値は1169.99だった。重要イベントを控えていたうえに、24日の日米首脳会談でTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の大筋合意が先送りとなったこともあり、総じて様子見ムードの強い展開だった。日銀の追加金融緩和に対する期待感と称して買い上がる動きも見られなかった。為替も小動きとなり概ね1ドル=102円台で膠着感を強めた。

  来週初28日の日本株は、前週末25日の米国株がウクライナ情勢を警戒して下落したため、売り優勢の軟調なスタートとなりそうだ。基本的には日経平均株価1万4000円~1万5000円近辺のレンジ相場が継続しそうだが、その後は薄商いの中、重要イベントを睨みながら、国内主要企業の15年3月期見通しに反応して波乱含みの可能性もあるだろう。

  30日の日銀金融政策決定会合に関しては、現状の金融政策を維持して追加金融緩和に踏み切る可能性は小さいとの見方が有力だ。前週末25日までを見ると、今回は日銀会合前に追加金融緩和への期待感と称して買い上げる動きが見られないため、追加金融緩和見送りでも反応は限定的だろう。ただし展望リポートでの景気・物価見通しや、会合後の記者会見での黒田日銀総裁の発言が注目されている。

  日銀の追加金融緩和に関しては、消費増税の影響を見極めるという点で、さらに政府が6月に取りまとめる予定の成長戦略に連動してという点で、7月以降という見方が優勢だ。しかし消費増税による景気の落ち込みを緩和し、15年10月消費税率引き上げ第2弾(8%から10%へ)の実施判断に向けて、7~9月期GDPのプラス成長を確実なものにするためとして、早期の追加金融緩和に対する期待感も根強い。

  市場では、主要経済指標や展望リポートでの景気・物価見通しが弱い内容であれば追加金融緩和への期待感が高まり、中立または強い内容であれば期待感が後退する。25日発表の4月東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)は前年同月比2.7%上昇した。日銀は消費増税が4月の消費者物価を3月に比べて1.7ポイント押し上げる効果があるとしていたため、4月中旬速報値は消費増税の影響がほぼ反映されたとの見方が優勢となり、早期の追加金融緩和への期待感は後退した形だ。このため展望リポートで景気・物価見通しが修正されるかどうかも注目点となっている。

  為替は、ウクライナ情勢絡みで一時的にリスクオフの動きを強める可能性もあるが、概ね1ドル=102円台での推移だろう。前週末25日の海外市場ではウクライナ情勢絡みで欧米株が下落し、為替も一時1ドル=101円90銭台に円が上昇する場面があったが、終値では1ドル=102円20銭近辺となり、東京市場に比べて極端にドル安・円高方向に振れたわけではない。リスクオフの動きも限定的のようだ。

  米FRB(連邦準備制度理事会)の緩和的な金融政策が長期化するとの見方が優勢になって米10年債利回りはなかなか上昇しないが、29日~30日の米FOMCでは100億ドル規模でテーパリング(量的緩和縮小)を継続する可能性が高く、さらに15年春~夏に向けて徐々にゼロ金利政策解除が視野に入ることを考慮すれば、米10年債利回りが一段と低下する可能性は小さいだろう。5月2日の米4月雇用統計に対して強い内容を予想する見方が優勢になれば、米10年債利回りが上昇して1ドル=103円台のドル高・円安方向に傾く可能性もあるだろう。

  国内主要企業の14年3月期決算発表は5月3日~6日の4連休を挟んで佳境を迎える。15年3月期は金融を除く全産業平均で14年3月期比10%程度増益という見方が優勢のようだが、消費増税の影響(駆け込み需要の反動減と消費マインドの低下)による国内販売数量減少、ドル高・円安進行一服による増益要因としての円安メリット縮小、コスト面での賃金上昇や原燃料価格上昇といったマイナス要因を、国内消費マインドの喚起、輸出数量の拡大、製品価格への転嫁、さらに高付加価値製品の拡販などで吸収できるかどうかが焦点となる。

  セクターや個別企業の特性・戦略によって異なるが、全産業平均という観点で見れば14年3月期比10%程度の増益達成に向けてのハードルは高い。自動車セクターなどの主要企業は期初時点では保守的な見通しを公表する傾向が強いことも考慮すれば、全体として市場の期待を上回る強気見通しが得られる可能性は低いだろう。すでに決算を発表した銘柄に対する反応を見ると、15年3月期見通しが市場予想を上回る増益見通しだった場合には素直に買いで反応するが、減益見通しだった場合、あるいは市場予想を下回った場合には発表直後に売り叩かれる光景はお決まりのパターンだ。

  ただし売り一巡後に切り返す動きも目立ち始めた。株式市場では消費増税の影響や円安進行一服の影響に対する警戒感をかなり織り込んでいるようだ。さらに消費増税の反動減やマインド低下といったマイナス影響についても、4月第1週~第3週の状況を見て、それほど深刻ではなく想定よりも落ち込みが小さく収まりそうだという観測が広がり始めている。こうした観測が下値を支える要因となるかどうかも注目される。

  ウクライナ情勢に関しては、米ロの外交的駆け引きが続くため一時的に売り材料視されるが、最悪の事態に向かう可能性は小さいとして過度な警戒感は後退しているだろう。中国の景気減速や理財商品デフォルト(債務不履行)に関しては、23日発表の中国4月製造業PMI速報値(HSBC)に対して市場がほぼ無反応だったように、景気減速警戒感はもはやサプライズとはならないだろう。売り仕掛けの材料とされやすいが影響は一時的・限定的だろう。むしろ、日本企業関連の資産差し押さえや没収などに対する関心が高まる可能性もありそうだ。

  株式市場での物色動向としては、14年3月期業績修正や15年3月期見通しなど、業績修正・決算発表に反応して個別物色の動きを強める。ただし好業績を材料視して発表直後に買い上げても、一転して資金の逃げ足が速くなる銘柄も多いため注意が必要となる。なお日米のTPP交渉に関しては、25日までに実質的に基本合意に達していたとの一部報道もあるため、農業関連などTPP関連銘柄に物色が向かうかどうかも注目点だろう。

  その他の注目スケジュールとしては、4月28日の日本3月商業販売統計、米3月中古住宅販売仮契約指数、29日の英第1四半期GDP速報値、ユーロ圏4月景況感・業況感指数、米2月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米4月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、30日の日本3月鉱工業生産速報、日本3月毎月勤労統計、日本3月住宅着工戸数、独5月GfK消費者信頼感指数、ユーロ圏4月消費者物価指数速報値、米4月ADP全米雇用報告、米4月シカゴ地区購買部協会景気指数、5月1日の日本4月自動車販売台数、中国4月製造業PMI(国家統計局)、米3月個人所得・消費支出、米3月建設支出、米4月ISM製造業景気指数、米4月自動車販売台数、2日の日本3月完全失業率・有効求人倍率、日本3月家計調査、日本4月マネタリーベース、米3月製造業新規受注などがあるだろう。

  その後は5月3日の中国4月非製造業PMI(国家統計局)、6日の豪中銀理事会、7日~8日の英中銀金融政策委員会、8日のECB理事会とドラギ総裁の記者会見、12日の日本4月景気ウォッチャー調査、15日の日本4月消費動向調査、ユーロ圏第1四半期GDP速報値、20日~21日の日銀金融政策決定会合などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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