中小企業への融資は5割が「より積極的」
2014年4月20日 18:26
国内景気が上昇基調を示している。これにより、企業の投資意欲も高まりを見せている。なかでも、資金調達の手段として金融機関からの借り入れに多くを依存している中小企業の動向が注目されている。
株式会社帝国データバンクでは、金融機関の中小企業への融資方針や貸出条件の変更を受けた企業の現状を把握するために、全国の金融機関に対し「2014年度 中小企業への融資方針に関するアンケート調査」を実施した。
この調査は、全国503の普通銀行(信託銀行、ネット専業銀行は除く)、信用金庫、信用組合を調査対象とした。調査期間は2014年3月5日~3月26日、調査方法は調査票(選択式および記述式)の郵送および電話による調査。回答数は401機関(回答率79.7%)だった。
14年度に金融機関が掲げる中小企業への融資方針についてたずねたところ、金融機関全体の57.6%が「積極的」(「積極的になる」「やや積極的になる」の合計割合)と回答した。「変化なし」(前年度同様)が37.9%で最多だったものの、「やや積極的になる」(30.7%)、「積極的になる」(26.9%)が続き、「やや消極的になる」と「消極的になる」との回答はゼロだった。
業態別にみると、信用金庫では「積極的になる」「やや積極的になる」があわせて5割を超えたほか、信用組合では7割を超えており、特に4割弱が「積極的になる」と回答、3業態のなかで最も積極的姿勢の割合が高かった。一方で、銀行は「変化なし(前年度同様)」が46.3%を占め、比較的小規模の企業が主要顧客である信用金庫・信用組合の積極的な姿勢が明らかになったという。
また、融資方針が「積極的になる」「やや積極的になる」との回答に対して、その要因をたずねたところ(複数回答)、「経営方針」が83.1%とトップで、「金融機関の競争激化」(49.4%)、「景気の上昇見通し」(37.2%)、「顧客業界の環境好転」(26.0%)の順で回答率が高かった。業界内で激しい競争が続くなか、金融機関は 2014 年度も景気が上向くとの見込みから、積極的な融資方針を掲げ、いっそうの顧客獲得、関係強化を図っていくものとみられるとした。
金融機関は融資判断の際にはあらゆる視点で企業を審査しているが、なかでも重要視しているポイントについて聞いたところ(複数回答)、全体では「経営者の資質」が56.4%とトップで、次いで「事業の成長性」(53.6%)、「取引状況全般」(53.1%)と上位3項目がいずれも回答率5割を超えた。
業態別にみると、銀行では「事業の成長性」(55.2%)に次いで、「借入目的・使途」(47.8%)、「経営者の資質」(44.8%)、「ビジネスモデル」(40.3%)となった。経営者の資質は当然のこと、「企業が借り入れを希望する意図や投資に対する成長可能性の見込み」といった戦略的要素を重視する傾向がうかがえる。
他方、信用金庫では、「経営者の資質」(60.3%)、「取引状況全般」(59.5%)がいずれも6割前後と、銀行・信用組合に比べて最も割合が高かった。「事業の成長性」(54.7%)、「借入目的・使途」(48.3%)といった項目に加えて、「経営者が信頼できるか、健全に事業を営んでいるか」という点をより重視している傾向がみられた。
信用組合についても、「経営者の資質」(54.9%)、「取引状況全般」(52.9%)が「事業の成長性」(50.0%)、「借入目的・使途」(35.3%)を上回っており、同様の傾向がみられた。その反面、「担保余力」(21.6%)、「返済実績」(20.6%)が銀行・信用金庫に比べて高く、中小零細企業への融資ほど返済力を重視しているといえる。
金融円滑化法終了後から1年が経過したが、金融機関が顧客から貸付条件の変更を求められた場合に、前年度と比べた対応方針の変化についてたずねたところ、「変化なし(前年度同様)」との回答が全体の88.3%を占めた。信用組合において、10.8%が「より積極的」(「積極的になる」「やや積極的になる」の合計割合)な方針を示しているが、大多数は前年度同様の対応方針を掲げていることがわかった。他方、「より消極的」(「やや消極的になる」、「消極的になる」の合計割合)との回答はゼロだった。(編集担当:慶尾六郎)