3Dプリンターで人骨を作成 NEDOがカスタムメイド人工骨を開発
2014年4月14日 13:12
3Dプリンターでヒトの骨を作れる時代になった。3Dプリンターは高機能化や低価格化がすすんでおり、その用途も拡大している。医療分野では歯科分野での活用が進んでいる。そして、ヒトの骨まで形成する技術まで登場した。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は7日、同機構の「産業技術実用化開発助成事業」の支援を受けた株式会社ネクスト21、東京大学、(独)理化学研究所などの研究チームが、世界初となる3Dプリンターで成形するカスタムメイド人工骨を開発したと発表した。さらに、関連事業を通じて同技術のヒトでの有効性と安全性を確認し、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)への薬事承認(製造販売承認)申請を完了した。
先天的骨欠損、後天的骨変形、がんなどの腫瘍摘出後骨欠損、外傷による骨欠損などの治療には、その欠損部への骨の移植が必要だ。日本では自家骨移植が第一選択肢である。これまでは、自己の足の骨や腰の骨を外科的に摘出し、手術室にて移植部の形状に削り成形していた。
この手術は自骨との癒合は良いが、患者への新たな外科侵襲があること、正確に成形して風貌を回復するのが難しいこと、手術時間が長くなり合併症の発生が多くなることなどが問題となっていた。また、熱処理により焼結した人工骨のブロックから工作機械で削りだして成形する従来のカスタムメイド人工骨は、骨との癒合が難しく、遊離して炎症を起こし表皮から露出してしまうという問題があった。
今回、研究チームが共同で開発したカスタムメイド人工骨は、成型方法、原材料、硬化処理方法が従来と異なる。3Dプリンターでの成形により、骨内部構造の設計、0.1mm単位の形状再現が可能となる。さらに3Dプリンターによる人工骨の成形は、熱処理が不要のため生理的に活性な特性をもち、自骨への癒合が早く、時間の経過とともに白骨へ変化(骨置換)するのが特長だ。
NEDOの事業で前臨床試験を完了し、NEDO事業終了後はNIBIOからの研究支援で臨床試験が実施されてきた。全国規模での臨床試験データから、ヒトでの有効性と安全性が確認されたのを受け、PMDAへの薬事承認(製造販売)申請を実施、この度手続きを完了した。審査にかかる期間は10カ月程度で、2015年に実用化の予定だ。
今後、ネクスト21では、薬事承認(製造承認)の取得後、日本で製造したカスタムメイド人工骨の日本市場への普及とともにアジア市場への輸出を計画している。さらに、この成果は海外からの関心と臨床使用への要望も高く、現在、オランダやカナダの会社とライセンス契約締結に向け、現地のカスタムメイド医療機器の規制への対応や契約条件について交渉を始めているという。(編集担当:慶尾六郎)