コンプライアンス違反倒産が過去最高の209件 問われる企業倫理
2014年4月13日 16:42
コンプライアンスとは、法令や社会倫理を遵守することである。最近では、企業にそれを求める声が多い。それは、企業に過去の粉飾決算が明るみに出る事例が後を絶たないことも一因となっている。
学習塾「TOMAS(トーマス)」を経営する株式会社リソー教育が不適切な売上計上を行っていたことが発覚したことも記憶に新しい。リソー教育では、代表取締役他が辞任する事態にまで進展した。こうした不正は、課徴金納付や第三者委員会の調査費用など多額の金銭的影響がある以上に、投資家や消費者、取引先へ与える影響が深刻である。財務基盤が脆弱な企業や、著しい顧客離れが発生した企業については、そのコンプライアンス違反を引き金として倒産することもあり得るのだ。
帝国データバンク株式会社は7日、第10回「コンプライアンス違反倒産」の動向調査を発表した。ここでは、「粉飾決算」や「脱税」などのコンプライアンス違反が取材により判明した企業倒産を「コンプライアンス違反倒産」と定義。「コンプライアンス違反倒産」は、2005年4月から集計を開始しており、今回は2013年度(2013年4月~2014年3月)までの倒産(負債1億円以上、法的整理のみ)について分析した。
その結果、13年度の「コンプライアンス違反倒」は209件と判明した。12年度の200件)を上回り(4.5%増)、年度ベースとしては05年度に集計を開始して以降で最多を記録した。違反類型別にみると、「粉飾」が前年度(57件)よりは 8.8%減少したものの52件判明し、構成比24.9%で最も多かった。以下、「業法違反」の33件(構成比15.8%)、「資金使途不正」の22件(同10.5%)と続く。
東日本大震災の復旧事業の補助金や、中小企業緊急雇用安定助成金、介護報酬などの「不正受給」が発覚した企業の倒産が、12年度は7件であったものの13年度は17件(同8.1%)と大幅に増加した。また、労働基準法違反など「雇用」関係のコンプライアンス違反が発覚した企業倒産(16件)も、前年度(11件)と比べ5件増加した。
業種別にみると、「建設業」が56件判明し、構成比26.8%で最も多かった。以下、「サービス業」の43件(構成比20.6%)、「製造業」の34件(同16.3%)と続く。一方、倒産件数が「建設業」に次ぐことが多い「小売業」における「コンプライアンス違反倒産」は、7件のみの判明となった。また、「粉飾」が発覚した「コンプライアンス違反倒産」を業種別にみると、建設業15件で最も多く、次いで卸売業の14件となっている。
今回の調査により、企業倒産減少局面においても「コンプライアンス違反倒産」が増加していることが判明したという。「粉飾」決算が発覚すると、その情報が取引先や消費者に伝わる。「粉飾」が発覚した企業に対する周囲の対応は非常に厳しい。また、コンプライアンス違反行為が複雑化、かつ多様化するなかでも、コンプライアンスへの意識の高まりから、「脱税」、「不正受給」など企業が手を染めやすい違反行為に対する監視の目は、これからさらに厳しくなると想定される。コンプライアンスを遵守できない企業が倒産に至るケースは、今後、さらに増えるであろうとしている。(編集担当:慶尾六郎)