東電福島原発事故教訓もコストで国富優先か
2014年4月12日 23:45
現在も空気中に排出され続ける放射性物質、東電発表で毎時1000万ベクレル。1日だと2億4000万ベクレルが放出、拡散し続けている。汚染水にも安心感は持てない。「汚染水は完全にコントロールされている」とオリンピック誘致で世界に力強くアピールした安倍総理。その内容に国民のどれほどが納得し、安心しただろう。
東電福島第一原発事故から3年が経った今も、同社には「3年経ってもまだ汚染水問題は解決していない。いつになったら解決するのか」「原発事故がまだ収束していないため、柏崎刈羽原発の再稼働は考えてほしくない」「福島県ではいまだに13万人もの人が避難しているという現状を経営層はどう考えているのか」など、問題や不安を指摘する声が寄せられる。
鍵カッコ部分は東電が先月寄せられた「お客からの声」を紹介した一部。東電に3月28日に寄せられた質問「福島第一原発1~3号機からの放射性物質の放出は続いているのですか?」には「1~3号機原子炉建屋からの現時点(2013年12月26日公表時点)での放出量の最大値は1時間当たり約0.1億Bq(ベクレル)と推定しました。事故時に比べ約8000万分の1の値です」と説明している。
「この放出量が1年続くと仮定した場合の敷地境界の年間被ばく線量を最大で約0.030mSv(ミリシーベルト)/年と評価した。法令で定める一般公衆の線量限度は1mSv(ミリシーベルト)/年になっている」。ただし、この数値は「既に放出された放射性物質の影響を除く」前提つきの話。
原発事故が起きた時の地域住民の暮らしや生態系への影響、人が居住できない、地域に踏み込めない状況の長期化は日本の領土さえ、事実上、失うに等しい。活用できないのだから、深刻だ。
さらに国際社会に対する責任はどうなるのか、地球環境を守る視点で原発の在り方をさらに慎重に審議する必要がある。
事故が起こった時の周辺地域への影響については「放射性物質は気体や微粒子の状態で空気中の塵などにくっつき、風で運ばれることが多いと言われる。風で運ばれた放射性物質は雨と共に地上に落ちる。原子力発電所からの距離だけがそのまま空気中の放射線量の高さに関係するわけではない。風向きの影響を受け、特に風下や雨が降ったところで比較的強くなる。雨が降った後は水の流れに沿って放射性物質が集まりやすくなるため、浄水場などに放射性物質を含んだ水が流れ込むと濃度が高くなる」と説明する。
事故に対する万全の対策があるのか、凡人の私にはわからないが、凡人にもわかる対策が整備されてこそ、再稼働の可能性が探れるのではないか。原発が一基も稼働していない状況で今、エネルギーが供給されている。
危険を排除するに限るというのが原発事故を経験し、収束できていない中で、国がとるべき姿勢ではないか。にも、かかわらず、政府は11日、経済界の意向を色濃く反映する「エネルギー基本計画」を閣議決定した。発電コストが低廉で安定的に発電でき、昼夜問わず継続稼働できるベースロード電源に地熱、一般水力、石炭に加え「原発」も位置づけた。再稼働も「規制基準に適合した原発は再稼働を進める」と大手を振って「原発再稼働」へ道を開いた。使用済み核燃料から取り出した核物質「プルトニウム」を再利用する核燃料サイクルを「推進する」とも表明した。
一方、再生可能エネルギーはエネルギーに占める比率を平成42年に約2割などの参考値を「さらに上回る水準の導入をめざす」と漠然とするに留めた。
菅義偉官房長官は11日の記者会見で原発ゼロを転換する大転換への批判をかわす為か、本当に真剣に取り組むつもりなの、基本計画を見る限り疑問符がつくのだが、再生可能エネルギーについて「政府の司令塔機能の強化、省庁間の連携促進のため、内閣官房長官を議長とする『再生可能エネルギー等関係閣僚会議』の設置を決め、政府が一丸となって再生可能エネルギーの最大限導入を実現していく観点から、局長級の関係省庁連絡会議を創設することを確認した」と語った。
再生可能エネルギーの目標を漠然と定めるのではなく、年度毎にできるだけ鮮明に定め、実績を毎年国会に報告し、翌年度の目標値を定めて、具体化を加速化することが重要だ。
社民党の又市征治幹事長は「原発に依存しない社会をめざすとした自民党の政権公約を完全に捨て去った」と強く批判。そうではないことを自民党は立証する責任が与党としてある。また、自民党の河野太郎議員が「原子力ムラが望む未来でなく、国民が望む未来をつくっていかなければならない」と訴えているが、政府・与党は、この声を原子力行政の『座右の銘』にすべきだろう。
今回のエネルギー基本計画は東電福島第一原発事故の教訓を超え、コストに重点が置かれた経済界や国富優先の閣議決定になったのではないか懸念される。そうでないことを期待し、政府の政策を注視していきたい。(編集担当:森高龍二)