【コラム 団克昭】STAP細胞から垣間見える日本の科学研究

2014年4月8日 14:14

【4月8日、さくらフィナンシャルニュース=東京】理化学研究所(=RIKEN)と小保方晴子氏との「STAP細胞論文」をめぐる攻防は、RIKENの調査委員会が一部不正を認定したことに対して、8日に小保方氏から不服申し立てがなされることで更に混沌としてくるであろう。
 
 しかし大きく騒ぎたてている割に、問題の根幹は手つかずのままだ。消化不良の感を抱くのは私だけだろうか?

 RIKENはSTAP細胞に関する論文がNATURE誌に掲載されるまでにラボの壁をピンクにし、ムーミンを掲げるなどしたことで、若手リケジョをイメージキャラクター化していたように感じる。 iPSでノーベル賞を取得された山中先生に脚光が集まり、巨額の研究費が投入されていくことに何らかの思いが生じていたのではなかろうか。

 一方の小保方氏は、「調査委員会からねつ造、改ざんと決めつけられるのは承服しかねる」と言うが、その前に科学研究のモラルに対して影響を及ぼしたデータ掲載時のミスや、コピペによる信頼性の失墜などをまず謝るべきだろう。その上で、本当にSTAP細胞が存在するのであれば、「だれも信じてくれない」などと言っていないで、数日で作れるという実験を第三者をたてて、実証してみせてはどうかと思う。作成出来る確率が10%なら、10回行なえば1回ぐらいは出来るのではないか。

 RIKENが1年かけて調査するより、よほど明快である。

 唐突ではあるが、日本の科学研究費を取得するためには、1、良いアイデア 2、それを実現する能力 3、そのことを正確に伝える能力----が必要なのだが、それ以外に監督省庁に足しげく通って今後実施される研究費募集の情報(どのような内容でいつ頃、いくらぐらいか)を密かに誰よりも早く知ることが断然有利になる。時として、ほとんどの研究者が募集されたことも知らない間に締め切られていることもあるが、その際にももちろん取得している人も実際にいるのである。

 近年、若手研究者が研究費の申請を行なう際に、再生などのキーワードを意識しないと取得しにくいなどと噂されるようになった。ちなみにアメリカの研究費の申請書はボリュームが桁違いに多い。大きな傘の下に入ることを前提とした、聞きかじりの知識では到底太刀打ち出来ない。

 研究にもその時々で流行や方向性があるのは事実だが、純粋に研究に向かう姿勢を審査、評価するような意識改革はできないものかと歯がゆい。【了】

 だん かつあき/国際抗加齢免疫医学学会理事長。国際毛髪抗加齢医学学会理事長。医薬資源研究所(株)代表取締役。1981年東京理科大学理学部卒。理学博士(東京工業大学)。慶應義塾大学医学部において30年以上基礎医学研究に従事する。薬化学研究所時代に糖尿病薬(スターシス)の開発研究。先端医科学研究所では、癌の免疫療法に関するテーマで米国、コネチカット大学医学部に留学。共同利用研究室にて産学連携事業に携わった。2014年3月より現職。

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