低予算旅行者が日本で最初に泊まるところ、それが空港(コラム)

2014年4月7日 11:00

 羽田空港・大阪関西空港などで深夜運航便が増加し、価格・時間帯ともにフライト選択の幅ができたのは、旅行者にとって喜ばしいことだ。

 しかし、問題も生じている。空港を一歩出ると、交通網のほとんどが深夜は動いていないのだ。そのため、「バジェットトラベラー」と呼ばれる海外の低予算旅行者たちの中には、空港内で一夜を過ごす者もいるようだ。

【深夜航空便の増加に追い付けない市街への交通網】

 日本国内の短距離交通網の多くは、終電から始発までの数時間が空白となる。

 例えば、羽田の早朝6時台の出発便に乗るには、5時空港着を目指す。しかし、都心部からでも始発利用でギリギリ間に合うかどうか。

 また、深夜11時台に到着する便を使用して羽田に到着、順調に入国し荷物を引き取れたとしても、終電はやはりギリギリ。運航に遅れが出れば、確実に始発まで空港で足止めされるのが現実のようだ。

【海外のハブ空港では?】

 日本からほど近く、アジアのハブ空港の一つである香港国際空港ではどうだろうか? 24時間運航の空港で、深夜を過ぎた離着陸便の使用者の足となるのは、バスとタクシーだ。香港内各地に向かうエアポートバスは基本的に24時間運行。料金の安いタクシーの利用も多い。

 また、アメリカの玄関口の一つLAX(ロサンゼルス空港)はというと、もちろん24時間運航しており、夜中でも人の流れが途切れることはない。空港周辺はシャトルバスが24時間運行。ロサンゼルス市内への足である24時間運行の公共バスへもアクセスできる。

 すなわち、早朝・深夜であっても、低予算で空港と街の間を移動する手段があるわけだ。

【バジェットトラベラーたちの選択】

 日本の空港でも24時間使用できる交通機関はある。タクシーだ。しかし、公共交通機関を利用すれば数百円のところ、数千円以上の深夜のタクシーは、バジェットトラベラーの選択肢とはなりにくい。

 また、空港近くの宿をとるのも、滞在時間の短さから考えて無駄であり、選択外となる。さらに、空港内のラウンジや仮眠施設、または24時間営業のレストランなどを利用する手もあるが、こちらも低予算の旅行者の懐には決してやさしくない。

 結果として彼らが選ぶのが、空港内のベンチなのだ。

【空港宿泊実体験】

 インドネシア人女性のブログ「erbina」では、終電後の羽田へ到着した際の体験談が書かれている。

 彼女は、「羽田に真夜中に到着したということは、東京への電車もバスもないことを意味し、バジェットトラベラーにはタクシーの予算はもちろんない」と語り、「羽田は清潔で静かでゆったりと眠れる空港だ」と空港宿泊の快適さを紹介した。

 筆者自身も、羽田深夜着便は何度か利用している。ある時は滑り込みで終バスに駆け込み、またある時は、なすすべなくベンチでウトウトしながら朝を待つ。ほとんど人の気配もなく、静かで清潔に保たれた空間は空調も効いていて、確かに思いのほか快適だ。

 数時間のために、有料のホテルやラウンジを使う気にはなれないバジェットトラベラーたちの気持ちはよくわかる。

 しかし、いくら空港宿泊が快適であっても、遠距離近距離交通の交差点としての本来の役割を果たせしていない点が気になる。24時間運航するならば、それに見合う交通手段の整備は本来当然ではないだろうか?

 深夜・早朝運航の航空便の増加に合わせた、国内交通網の整備に期待したい。

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