急成長前夜のカンボジア市場に進出する日本の小売業
2014年3月30日 20:29
中国の経済発展による賃金上昇や、日中の政治的緊張の高まりなどを背景に、生産拠点を東南アジア諸国へ移転する企業が増えている。中でも、賃金の安さや労働力の確保のしやすさなどを理由に、カンボジアが移転先として脚光を浴びているという。
公益財団法人横浜企業経営支援財団による海外現地レポート「カンボジアにおける日系企業の進出動向」によると、日本の投資額は中国や韓国に比べるとまだ低いものの、電器部品メーカーのミネベア株式会社<6479>が2011年12月に自社工場を稼働させたのを皮切りに、住友電装や矢崎総業が工場を稼働させたことなどが大きく影響し、カンボジア日本商工会正会員数が2011年に急増。2012年は商業省の登録数(駐在事務所、支店、現地法人)が単年で100社を超えたようで、投資額も累計で約3.2億円にものぼるとみられている。また、日系金融機関も、12年に三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行、13年にはみずほ銀行もプノンペンに駐在事務所を開設したことで、カンボジアにメガバンク3行が揃い、多くの日系企業の進出に拍車をかける形となっている。
製造拠点としてだけではなく、同国のGDPの高まりを受けて、市場としての進出を試みる企業も増えている。例えば、ショッピングモールの展開で躍進を続けるイオン<8267>もその一つで、12年にカンボジア1号店「イオンモールプノンペン」起工式を実施しており、14年度中にもプノンペンで同国最大級のショッピングモールをオープンさせる予定だ。
また、カンボジアを目指すのは大企業だけではない。ヤマハ発動機<7272>製のバイク販売店である有限会社YSP伏見も、首都プノンペンに同社にとって初めての海外進出となるヤマハ二輪の専売店の出店を果たし、新興市場に夢を託す企業の一つだ。13年1月にヤマハの現地法人YMKHが開業促進のために開いた会議に現地の実業家たちと席を並べたYSP伏見の桑野社長は、かねてから若い世代の社員が活気溢れる市場で未来への希望を持ち、その実現に挑戦する舞台をつくりたいと考えていたこともあり、出店を決意。カンボジアの社会通念や商習慣に戸惑いながらも、約10か月間の準備期間を経て開店した。慣れない海外への出店はリスクは覚悟していたが、現地のショップはまだお客様視点という商売の基本ができていない段階。日本で磨いたスタッフ個々の技術や販売ノウハウ、日本で鍛えた質の高いサービスが受け入れられるはずだと桑野社長は自信をのぞかせる。
世界各地の多くの新興市場に進出してきたヤマハ本社でも、GDPが1,000ドルに達すると二輪車需要が飛躍的に伸びるというデータをもとに、GDPが900ドルを超えたカンボジアは今まさに急成長の前夜とみているようだ。近い将来、日本の小売業者がこぞってカンボジアに進出する日も訪れるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)