大手企業の「おつきあいベア」と揶揄された政府主導のベースアップで景気は上向くか
2014年3月24日 15:51
安倍政権の要請により、当初は難色を示していた大手企業各社が軒並みベースアップに応じるかたちとなった。トヨタ<7203>2700円、日産<7201>3500円、ホンダ<7267>2200円の大手製造業をはじめ、流通ではイトーヨーカ堂2031円、ニトリ<9843>2173円、ローソン<2651>3000円、ファミリーマート<8028>5000円で妥結した。
この結果に大喜びしたのは、大手企業の社員だけではない。菅義偉官房長官は「近年にない賃上げが実現したことは素直に評価したい。復興特別法人税の前倒し廃止などの思い切った税制措置が大きく寄与した」「首相が先頭に立って労働組合や経営者にベアをお願いし、かつてないことを行ってきた。その結果がこういう状況につながったのではないか」と安倍政権の成果であることを強調。経団連米倉弘昌会長は「円安で息を吹きかえし、業績も改善してきた。企業が経済の好循環の実現に努力しているのはうれしい限りだ」とコメント。また甘利明経済財政・再生相は「デフレ脱却と経済再生の原動力となる手応えを感じる」と語った。
しかし回答前には企業側に対して「何も対応してくれないなら、好循環に非協力的ということで何らかの対応があると思う」とけん制もしていた。今回のベースアップは製造業大手には、アベノミクスによる円安が追い風になったことは確かだが、菅義偉官房長官が指摘したように、3月末に復興特別法人税が1年前倒しで廃止されることも大きく寄与している。政府の要請に企業側が従っただけで、ベースアップは今回限りではないかと懸念する声もある。
大々的に報道されたこのベースアップだが、実際は日本の労働者の3割に影響するに過ぎない。労働者の7割を占める中小企業で働く労働者にはどう波及していくのか、注目されるところだ。また労働者の4割を占める約2,000万人の非正規雇用社員の賃上げや待遇改善についても、残されている課題は大きい。因に、トヨタは期間従業員の日給を200円引き上げると発表。ニトリはパート・アルバイトの時給を平均21.4円引き上げることを発表した。ともあれ、賃上げが嬉しいことには間違いないのだが。(編集担当:久保田雄城)