【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】米長期金利の動きと米国株の反応を睨みながら神経質な展開

2014年3月23日 14:48

  来週(3月24日~28日)の株式・為替相場は、ウクライナ情勢や中国の景気減速・理財商品デフォルトへの懸念に引き続き注意が必要だが、重要イベントの谷間となり、前週19日のイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長の発言で動揺した米国市場がどのように動くのかが焦点となる。米長期金利の動きと米国株の反応を睨みながら神経質な展開となりそうだが、週後半の実質新年度入りに伴う新たな資金流入に対する期待感が高まるかも焦点だろう。

  前週は19日発表の米FOMC(連邦公開市場委員会)声明でテーパリング(量的緩和縮小)継続を決定し、フォワードガイダンスでは従来6.5%としていた失業率目標を撤回した。ここまではほぼ市場予想どおりの結果だった。しかし声明後の記者会見で、イエレンFRB議長が「ゼロ金利解除の時期は証券購入終了から半年後(15年春ごろ)」と発言したことを受けて、米長期金利が急上昇し、為替はドル高・円安方向に振れ、米国株は急落した。ゼロ金利解除の時期は15年夏~後半という見方が有力だった市場が動揺した形だ。

  この米国市場の動きに対して翌20日の日本市場では、為替は概ね米国市場と同水準の1ドル=102円台で推移した。しかし日本株は次第に売り優勢となり、日経平均株価は前日比238円29銭安と大幅下落して終了した。ウクライナ情勢に対する過度な警戒感が後退し、米長期金利上昇で為替がドル高・円安方向に傾いたにもかかわらず、週末3連休を控えていたこともあり、株式市場は米国株急落を嫌気した形だ。この結果、前週の日本株の主要株価指数を週間騰落率で見ると日経平均株価は103円43銭(0.73%)下落、TOPIXは18.73ポイント(1.61%)下落となった。

  ただし日本市場終了後の20日の米国市場では、10年債利回りが概ね安定した動きとなり、3月フィラデルフィア地区連銀業況指数などの主要経済指標も好感して米国株が反発し、ダウ工業株30種平均株価は前日の下落分をほぼ取り戻した。前日の動揺が一巡した形だ。そして21日は中国株が大幅上昇した。米国市場ではダウ工業株30種平均株価が週末の利益確定売りに押されて小幅に反落し、S&P500株価指数も取引時間中の史上最高値更新後に反落したが、債券市場、外国為替市場、株式市場とも概ね落ち着いた動きだった。

  こうした米国市場の動きを受けて、週初24日の日本株もやや落ち着いたスタートとなりそうだ。そして来週は週後半の実質新年度入りで需給改善に対する期待感が高まることもあり、大勢としては前々週の大幅下落に対するリバウンド局面を想定する。ただし日本株は先物での仕掛け的な売りに委縮しているだけに、米主要経済指標を受けて15年春のゼロ金利解除に向けた長期金利上昇と長期金利上昇に伴う米景気減速懸念が交錯し、米長期金利の動きと米国株の反応を睨みながら神経質な展開となりそうだ。為替は概ね1ドル=102円台で推移しそうだ。

  ウクライナ情勢に関しては予断を許さない状況が続くが、前週はロシア軍がクリミア駐留のウクライナ軍施設を襲撃との報道に対して市場はほぼ無反応だっただけに、最悪の事態に向かう可能性は小さいとして過度な警戒感は後退しているようだ。また米ロの制裁合戦の様相を呈していたが、ロシアは当面は制裁合戦を回避する方針を示している。

  中国の景気減速・理財商品デフォルト(債務不履行)・人民元下落などに対する懸念に関しては、24日の中国3月製造業PMI速報値(HSBC)の結果次第では波乱要因となるが影響は一時的だろう。もちろん、こうした材料で仕掛け的な動きが見られる可能性もあるだけに引き続き注意が必要だ。

  その後は、国内で消費増税後の景気減速を警戒する動きが強まるのか、4月7日~8日の日銀金融政策決定会合に向けて追加金融緩和に対する期待感が高まる相場になるのか、それとも追加金融緩和を督促する相場になるのかも焦点となりそうだ。株式市場での物色動向としては引き続き、消費増税の影響を受けにくいセクターとしてゲーム関連、再生エネルギー関連、ロボット関連、さらに国家戦略特区公表が接近している公共投資関連が注目される。

  その他の注目スケジュールとしては、24日のユーロ圏3月総合・製造業・サービス部門PMI速報値、米2月シカゴ連銀全米活動指数、米3月製造業PMI速報値、25日の独3月IFO業況指数、米1月住宅価格指数(連邦住宅金融局)、米1月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米2月新築一戸建て住宅販売、米3月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、26日の独4月GfK消費者信頼感指数、米2月耐久財受注、27日の米2月中古住宅販売仮契約指数、米第4四半期GDP確報値、28日の日本2月全国・3月東京都区部消費者物価指数、日本2月完全失業率・有効求人倍率、日本2月全世帯消費支出、日本2月商業販売統計、日本3月上旬貿易収支、米2月個人所得・消費支出などがあるだろう。

  その後は4月1日の日銀3月短観、豪中銀理事会、インド中銀金融政策決定会合、3日のECB(欧州中央銀行)理事会とドラギ総裁の記者会見、4日の米3月雇用統計、7日~8日の日銀金融政策決定会合、8日のインドネシア中銀金融政策決定会合、9日の米FOMC(連邦公開市場委員会)3月18日~19日開催分の議事要旨公表、9日~10日の英中銀金融政策委員会、11日のG20財務相・中央銀行総裁会議、16日の中国第1四半期GDPなどが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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