日立が水中走行遊泳ロボットと形状変化ロボットを開発 福島原発の燃料取出し調査に活用
2014年3月16日 12:05
日立製作所と日立GEニュークリア・エナジーは、姿勢や形状を自在に変化させ、狭隘空間であっても障害物を回避しながら、広い範囲を遠隔で調査できる水中走行遊泳型ロボット(クローラ)と形状変化型ロボット(クローラ)を開発した。水中走行遊泳型ロボットは水中、形状変化型ロボットは陸上において、人間が作業することができない障害物や構造物に囲まれた狭い空間での移動が可能であり、冷却水の漏えい箇所の調査や燃料状態の調査に活用することが期待される。
二つのロボットは、資源エネルギー庁が補助事業として進めている福島第一原子力発電所での燃料取り出し作業に用いるための遠隔装置の開発に先立ち、日立と日立GEが各種調査に用いるために開発したもの。
福島第一原子力発電所では、圧力容器内に冷却のために水を継続的に注入している。冷却水の一部は、圧力容器から格納容器を経て、発電所建屋の地下階などに漏えいし、放射性物質を含む滞留水となっている。滞留水は、放射性物質や塩分除去などの浄化作業を経てタンク内に保管されているが、滞留水を減少させるには、原子炉建屋内での漏えい箇所を特定し、補修(止水)することが必要だ。
こうした状況に対応して日立と日立GEは、水中での水平及び垂直面の壁面走行と遊泳動作を1台で可能にした水中走行遊泳型ロボットと、直径100mmの管内走行と凹凸面上の安定走行を両立した形状変化型ロボットを開発した。
水中走行遊泳型ロボットは、水で満たされた発電所建屋内を調査するためのロボットであり、原子力発電所の滞留水の漏えい箇所を水中から調査する装置として活用できる。水中での移動自由度を高くするために、走行動作と遊泳動作を両立した点が特徴。特に、走行動作については、水底の走行のみならず、遊泳による障害物回避や遊泳後に姿勢を変化させ、壁面に吸着して走行する機能も有している。
原子力発電所には放射線量が高い領域があり、対象部位に装置を挿入するための開口部は極力小さくする必要がある一方、小型の移動装置は走行が安定しないため踏破性に課題があった。今回開発された形状変化型ロボットは、本体及び両端の2つの小型クローラの3関節で構成され、本体に対してクローラを90度で回転して形状を変化させる。原子炉格納容器内部の走行を想定した試験を実施した結果、直径100mmの配管を通過できること、格子寸法25mm×90mmのグレーチング平面上(格子状の鋼材)を走行できること、さらに、凹凸のある面上を安定走行できることを確認した。
二つのロボットは、今後、資源エネルギー庁が実施している補助事業を通じて、福島第一原子力発電所の燃料取出しに向けた調査装置へ活用する。名高い日本のロボット技術を活用し、一刻も早く福島原発の安定化が進むことを願ってやまない。(編集担当:横井楓)