サバイバー株や再上場株から「第2の吉野家・チムニー」にアプローチ=浅妻昭治
2014年3月10日 13:38
<マーケットセンサー>
小林旭のヒット曲『昔の名前で出ています』ではないが、株式市場ではこのところかつて栄華を誇ったブランド株のサバイバー(失地回復)人気や、再上場株の高人気が目立っている。サバイバー人気では、外食産業株の雄で一時は赤字転落した吉野家ホールディングス <9861> が、「牛すき鍋膳」のヒットで息を吹き返して今年2月に昨年来高値を更新し、ネット関連の先駆株となったUSEN <4842> (JQS)も、長く2ケタ株で低迷していた株価が、昨年11月に新株価指数JPX日経インデックス400に新興市場の株少ない構成銘柄に選定されたことをキッカケに今年1月に447円高値まで買い進まれて大化けした。
再上場株で株価が急騰しているのは、チムニー <3178> である。同社株は、2010年4月にMBO(経営陣による株式公開買付)により上場廃止となり、2012年12月に東証第2部に再上場されたが、昨年11月からのやまや <9994> の株式公開買付(買付価格1510円)に3月4日の東証第1部への指定替え、アサヒグループホールディングス <2502> の子会社のアサヒビールの株式取得と好材料が続いて上場来高値1847円まで買い進まれ、再上場時の公開価格1000円に対して約8割高した。
この高人気は、調整相場の狭間で一過性にとどまるのか、それとも材料株物色の一角として今後もしっかりと根付くのか、大いに悩ましいところで、もちろん全般相場の成り行き次第の側面を持つ。全般相場は、日経平均株価が、前週末に今年に入って初めて4日間の続伸となり、1月29日以来の高値をつけるなど持ち直した。この背景は、今週10~11日に開催される日銀の金融政策決定会合での追加金融緩和策期待であり、さらにウクライナ情勢への警戒感も和らいで米国のS&P500種株価指数が、史上最高値を更新し、つれて為替相場も、1ドル=103円台へ円安に振れたことなどにある。その後、前週末に発表された米国の2月の雇用統計も、非農業部門の雇用者数が市場予想を上回っており、全般相場は、今週もTOPIX Core30の主力株や輸出関連株を中心に上値にトライする展開が有力である。
早い話が、売り方の買い戻しをテコに主力株買いが増勢となるなか、サバイバー株や再上場株に追随買いをしたら、ハシゴを外されて高値で取り残されると懸念が残ることになる。しかしである。ウクライナ情勢は、米国・欧州・ロシアの外交交渉が難航するなか、偶発的に最悪事態が突発しないとも限らず、日銀の追加緩和策も、当初観測通りに消費税増税後に発動されるということになれば、相場全般が、全面的にリスクオンの展開となるかについてはなお予断を許さない相場シナリオになる。ということは、サバーバー株と再上場株にアプローチ、追随しても、粘り勝ちになる展開も期待できることになる。
ことに再上場株は、今年のIPO市場でも一大勢力となることが予想されている。3月18日には日立マクセル <6810> が、東証第1部にIPOされ、早ければ4月下旬にも西武ホールディングスが、西武鉄道の上場廃止以来10年ぶりに再上場されると観測されており、このほかMBOによって2005年に上場廃止されたワールドや、同じく2006年に上場廃止されたすかいらーくの再上場も、下馬評にのぼっている。 『昔の名前で出ています』と存在感を誇示しそうなサバイバー株や再上場株へのアプローチを一考する妙味はありそうだ。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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