「桜はまだかいな」の材料株のローテーション相場で激甚災害関連株にはまだまだ出番=浅妻昭治
2014年3月3日 09:46
<マーケットセンサー>
「やっぱり」というのが偽らざる感想である。浅香工業 <5962> (東2)の今年2月末の2週間の値動きについてである。同社株は、今年2月14日深夜から15日にかけて、関東甲信地方を見舞った2度目の記録的な大雪で、新幹線・航空便が運休・欠航し、高速道路で自動車が立ち往生する被害が広がったことを手掛かりに、国内シェア5割の同社のショベルへの雪掻き用の特需思惑を強めて、ストップ高を交えて昨年来高値196円まで急伸した。ところが、この大雪被害の復旧が進むとともに、株価は、急落して往って来いとなってしまったのである。
激甚災害が起こるたびに繰り返される毎度お馴染みの同社の急騰劇、急落劇であり、「やっぱり」という感想が口から洩れ出たのである。通常は、同社の日々の売買高は、出来た日でも2万株台ととどまる同社株が、ストップ高した2月17日、高値をつけた18日の2日間の合計で280株にも膨れ上がった。仕掛けた投資家が、上手く高値で売り抜けられたのか、それとも高値でハシゴを外されて取り残されてしまったのが多数派に上っているのかいささか心配になる。
しかしである。この同社株への思惑は、相場テクニック的には高値飛び付き買いのリスクを冒したかもしれないが、純粋に相場スタンス的に振り返ればそう間違っていたとはいえなかったはずだ。それは全般相場の動向を勘案すれば導き出される結論である。全般相場は、季節の移ろい表す江戸端唄と同様に「梅は咲いたか桜はまだかいな」という相場ステージにあった。本命の「桜」に例えられる主力株は、米国の経済指標の弱含み、新興国通貨の急落、中国景気の先行き不安、ウクライナ情勢緊迫化による円高懸念、さらに外国人投資家の日本株への「リスクオフ」姿勢などで上値が重くなって身動きが取れなくなっていた。その間隙を突いて「梅」ともいうべき材料株に急騰する銘柄が続出したのである。
東京都知事選挙への「脱原発」を旗印に掲げた細川護煕元首相の立候補をキッカケに省電舎 <1711> (東マ)、エナリス <6079> (東マ)、ファーストエスコ <9514> (東マ)などの再生可能エネルギー・省エネ関連株がストップ高したのを皮切りに、新型万能細胞「STAP細胞」の発見ではiPS細胞関連株が急騰し、生活支援ロボットの開発・製造・販売をするCYBERDYNE <7779> (東マ)の新規株式公開(IPO)承認では、介護関連ロボットメーカーの菊池製作所 <3444> (JQS)や関連部品メーカーのハーモニック・ドライブ・システムズ <6324> (JQS)などが相次ぎストップ高し、同じく無料チャットアプリのLINEのIPO思惑でも、関連のネット株が急伸し、さらにPM2.5関連株、花粉症関連株なども動意しきりとなっている。要するに主力株の展開難を尻目に、材料株の循環物色、「グレート・ローテーション」が続いていたのである
だから、大雪に伴う復旧特需思惑を手掛かりにこの「グレート・ローテ―ション」の一角入りを期待して浅香工業に仕掛けの買い物を入れたのも相場スタンス的には何ら誤りではなく、ただ期待した後続の買い物に事欠いたにすぎなかったのである。現に、浅香工業は急騰して急落してしまったが、同様の特需思惑で昨年来高値を更新し、しかも追随買いで高値で良好に値保ちをキープしている銘柄が続出したのである。建機レンタルのカナモト <9678> 、西尾レントオール <9699> は、この代表株である。
そこで、浅香工業は取りあえず脇に置いておくとして、この激甚災害関連株を「グレート・ローテーション」相場の資格十分セクター株として注目してみたいのである。もちろんこの背景は、激甚災害に伴う特需発生が恒常化していることにある。昨年2013年の激甚災害をみただけでも、8月に島根県を襲った豪雨被害、9月に福井県・滋賀県・京都府で広域的に被害を拡大した台風18号、10月に東京都大島町に被害が集中した台風26号などと相次いでおり、この被害規模は、従来の想定を超えていた。地球温暖化による異常気象が、こうした激甚災害に輪をかけており、しかも欧州の洪水被害、フィリピンの台風被害、さらに米国の経済指標を押し下げた米国の大雪被害などグローバルに広がっているのである。今回の関東甲信地域の大雪被害は序の口で、今年も、梅雨期、台風到来シーズンに想像したくはないが、想定外の激甚災害が発生すると懸念されるのである。
主力株の「桜」の開花が、前倒しとも観測されている日銀の追加金融緩和策が、早くても4月の消費税増税後となり、それを待って遅咲きになるとすれば、当分は、材料株の「梅」への思惑が続くことになり、この「グレート・ローテーション」相場の有力株の一角として、激甚災害関連株への前向きに対応することもそれだけ妙味が期待できることになりそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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