ホンダ、初の女性役員登用で「ウーマノミクス」本格化? 海外識者はさらなる改革求める
2014年2月26日 09:17
ホンダは24日、芝浦工業大学大学院教授の國井秀子氏(66)を取締役に内定した。同社では創業以来、初の女性役員となる。同時に、南米子会社・ホンダサウスアメリカのミゾグチ・イサオ氏を本社執行役員へ昇格することも発表した。
【海外シェア拡大が狙い】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回の人事を、海外シェア拡大策の一環と分析する。
ホンダは2年前に新しい海外戦略を発表している。その実践には、経営陣に多様なバックグラウンドを持つ人物が不可欠、と判断したようだ。この先国内は人口が減少することから、海外での販売拡大に生き残りがかかっている。その使命に対応し得る人物の選出が今回の人事につながった、と同紙は伝えている。
【あるいは時代遅れからの脱出】
一方AP通信は、国内メーカーにある「時代遅れなイメージ」を刷新する策、との見方を示している。
安倍首相は、自身の掲げる「ウーマノミクス」を実践すべく、企業に女性の昇進を促してきた。しかし大企業で実行したのは今回のホンダがやっと初である。トヨタも日産も、外国人役員はいるが女性役員はまだいない。女性の社会進出については、ホンダが一歩抜きん出た形となったと報じている。
【安倍首相は本当にウーマノミクス適任者?】
ようやく動き始めたかに見える安倍政権の「ウーマノミクス」だが、海外からはまだまだ疑いの目を向けられているようだ。フィナンシャル・タイムズ紙のデービッド・ピリング氏は、安倍首相が昨年のダボス会議でアピールした「ウーマノミクス」の問題点を指摘している。
「女性の昇進を阻むガラスの天井を壊し、働きやすい構造に変わるよう全面的に協力する」
安倍首相は会議でこのように発言した。しかしその「ガラスの天井」はコンクリートのごとく強固で、「構造」は折り紙のようにもろい、とピリング氏は断じる。同氏によると、高齢化と少子化に直面した日本において、今や女性は「全て」を引き受けなくてはならなくなったという。にもかかわらず社会構造は旧態依然のままで、ひいては政府の女性に対する要求は、以下のようにかくも無謀なものとなる。
“出生率は減る一方だから子供はしっかり産んでください。でも保育園が足りないから育児は自力でお願いします。高齢者は施設に抵抗あるみたいだから介護もやってあげてください。ああそれから、その全部をこなすと同時にフルタイムで働いてくださいね。GDPを上げたいので。”
言うまでもなく、そんなことはできるわけがない。日本が本当に女性の社会活用を促進したいなら、企業も社会も革命的な変化が必要、と同氏は断じる。
女性が「全て」をやらなくてはいけないなら、それを可能にする環境を作るのが先である。フレックスタイムの導入や、子を持つ女性を管理職として受け入れる体制など、出産がキャリア形成の壁にならない制度を先に整えなくては実現できるわけがない、と同氏は指摘している。
しかし、元来保守的な社会観を持つ安倍首相が、果たしてその改革の適任者と言えるのか。「構造」という骨格だけ作っても、そこに肉付けがなければ単なる形だけに終わってしまう。このように同氏は、安倍首相の適性を疑い、ウーマノミクスの行く末に懸念を示した。