不偏不党 NHK職員以上に遵守させるべき
2014年2月22日 17:50
新藤義孝総務大臣。衆議院予算委員会でのNHKにかかる集中審議での答弁で「NHKの経営委員の言動を制限することは経営委員としての職務以外の場においては出来ないことになっている」。NHK経営委員会の浜田健一郎委員長。「経営委員は放送法上、兼職が認められており、経営委員としての職務以外の場において、自らの思想・信条に基づいて行動すること事態は妨げられるものでないと認識している」。
公共放送の経営委員会の委員に就く人が、これだけ甘い縛りの下で職務以外の場での活動に制約なく自由放任で許されて良いのだろうか。放送法の見直しも視野に検討すべき課題だろう。
経営委員の百田尚樹氏は都知事選挙の田母神俊雄候補(当時)の応援時に他の候補を「人間のくずみたいなもの」などと発言。後に「言い過ぎだった」とマスコミの取材に話したようだが、特定候補を応援したことについては『何の問題もない』との認識も示したと報道がある。
確かに、現在の放送法においては経営委員会での職務以外の場においての縛りがないらしい。しかし、NHK経営委員を一方でつとめながら、一方で選挙での特定候補応援を公然と私的な立場で行うというのは法的に許されても、職業倫理からはやはり大きな疑問を抱かざるを得ない。
極端な例で申し訳ないが、閣僚が靖国神社に参拝して「私人として参拝した」と主張するのに似たところがある。本人は本当に私人で参拝したのかもしれないが、客観的には閣僚の肩書きは外せない。
同様に、経営委員会の委員である以上、経営委員会で委員としての仕事をしていない場合であっても、肩書きは常に、対する相手に重なってみえるものだ。良かれ悪しかれ日本の文化として肩書き社会のようなところが少なからず存在する。
さらに、それ以前に、公共放送の経営委員としての品性も問われかねない。野田佳彦元総理は自身のブログで「百田氏がどのような政治信条をもとうが、誰を応援しようが、それはご本人の自由。ただ(自分の意見と異なる政治家や候補者を売国奴、人間のくずみたいな奴と酷評したのは)異なる意見に対し余りにも狭量すぎるし、批判の表現も品性に欠け過ぎではないでしょうか」と綴っている。同感だ。
本当に『不偏不党・公平公正』なジャッジが期待できるのか。バランス感覚に懸念を抱かざるを得ない。
同様に、朝日新聞社で拳銃自殺した右翼団体元幹部を礼賛する追悼文を書いていた長谷川美千子埼玉大学名誉教授についても、社会的なバランス感覚を期待できるのか、危惧をぬぐえない。
仮に、こうした経歴や思想の持ち主であっても経営委員になることに問題がないというのであれば、少なくとも、経営委員在任期間中は、他の職を兼務していたとしても、NHK職員が職員に就いている以上、不偏不党・公平公正であり続けることを服務準則で自主規制されるように、同じく縛りを設けるべきであろう。経営委員はそのことを理解したうえで受けるべきポストであるべき。
放送法を改正して、そうした措置をとらなければ、経営委員会に対する国民の信頼は失せることになりかねない。
新藤総務大臣は「経営委員の言動を制限することは経営委員としての職務以外の場においては出来ないことになっている」とする一方で「個々の経営委員に経営を委託することはできないことになっている。経営委員は合議体を持って経営委員会としていろんな決定を行っていくということになっている。また、経営委員は個別の放送番組の編集などに関わることはできないことになっている」と経営委員が問題を孕んでいたとしても、経営委員会は合議体での決定をしている、経営委員が直接に個別の番組編集に関わることはできないなど、リスク回避機能が担保されているかのごとく予算委員会で答弁した。
合議体であったにしても、直接に個々の番組に関与できないにしても、経営委員の個性が反映されないとはいえないだろう。職員と同様に在任中は常に不偏不党・公平公正の位置を保つ義務を負わせることが求められる。
衆院の予算委員会で生活の党の村上史好議員は「NHKの職員には不偏不党・公正公平を遵守しなければならないと自主規制しながら、会長や経営委員には自由に、個人的な意見だから発言OKというのは公共放送に関わるものとしておかしい」と追及した。的を射ている指摘だ。
NHK経営委員会の浜田委員長は「公共放送であるNHKにとって重要な使命である不偏不党・公平公正に厳しい批判があることも承知している」と答弁し「2月12日の経営委員会で経営委員ひとりひとりが服務準則にのっとり、公共放送の使命と社会的責任を深く自覚し、一定の節度をもって行動していくことを申し合わせた」と答弁し、「経営委員長として申し合わせの趣旨が徹底されるよう努力していく」と語った。
新藤総務大臣は「公共放送の使命と社会的責任を深く自覚する。そして一定の節度を持って行動することは当然、わきまえること」とし「改めて申し合わせ頂いたと承知している」と語った。
国民の多くは申し合わせ程度でなく、在任中は厳格なルールの下で不偏不党・公平公正を徹底させてほしいと願っているのではないか。わたしは放送法改正でそれを担保すべきと考える。(編集担当:森高龍二)