ウクライナ暴動は局地現象?新興国の選別はどのようにすべきか

2014年2月20日 09:39


*09:39JST ウクライナ暴動は局地現象?新興国の選別はどのようにすべきか
ウクライナの首都キエフで18日、反体制派と治安部隊との衝突が再燃し、これまでに少なくとも25人が死亡したと報じられている。

同国の混乱は、昨年11月にヤヌコビッチ大統領がロシアからの圧力に屈し、欧州連合(EU)との協定締結を見送ったことが引き金となった。EU加盟を目指す反体制派に対してヤヌコビッチ政権は治安部隊を送り込み、民衆の反乱を押さえ込もうとしている。

これに対してEUは20日に臨時会合を開き、ウクライナ政府に対する制裁決議を行う運びだ。ただ、EUのウクライナ戦略には明確さを欠き、「暴動が激化したから対応する」という受身的な対処にとどまるとの印象が強い。

一方、ヤヌコビッチ政権を取り込みたいロシアも同国への支援を一時的に見送っており、「ウクライナは内戦の瀬戸際にある(ポーランド政府)」との危機感が次第に高まっている。

こうした中、19日の債券市場ではウクライナ国債が過去最大の下落。また、ロシア通貨ルーブルも過去最安値を更新した。

ウクライナでは外貨準備高が減少の一途を辿っており、1月には前月比12.8%減の178億500万米ドルにとどまった。昨年12月のモノの輸入総額は70億5140万米ドルで、外貨準備で輸入代金を支払える能力は2.5カ月と危険水域とされる3カ月を下回った。アルゼンチンの通貨ペソについても、外貨準備で輸入代金を賄える期間が3カ月を割り込んだことが暴落の一因となったことは記憶に新しい。

ウクライナの国内総生産(GDP)は2012年で1763億ドル。日本の5兆9600億ドルの約100分の3しかなく、同国の経済危機が世界経済に与える影響は無視できる程度でだろう。また、ロシア通貨ルーブルの下落は、同国が変動相場制への移行に向けて通貨安を容認していること、ロシア財務省が安定化基金に繰り入れる目的で約60億米ドルの外貨購入を実施する方針を発表したことも原因になった。

こう考えると、ウクライナ情勢の悪化はあくまでも“局地的”であり、世界経済に与える影響は限られると理解することもできる。確かに、米連邦公開市場委員会(FOMC)で「早期の利上げ」を要求する意見が上がったこと、中国で景気指数悪化が見込まれることの方が新興国全体に与える影響は大きくなるかもしれない。

国際通貨基金(IMF)などは新興国に「構造改革を急ぐべき」と要請しているが、ウクライナやタイ、ベネズエラなど国内情勢が混沌としている国では政治機能がマヒしているため改革は見込めない。

最近は新興国の“選別”が必要という意見がよく聞かれるが、「構造改革を手掛けていない国」「局地的な政治不安に巻き込まれそうな国」「中国要因の影響を受けやすい国」「欧米の景気回復の恩恵を受けやすい国」などが区分けの基準となりそうだ。

これらを基準にすれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)は中国の影響を受けやすいという弱みを抱えているほか、タイなど政情不安も気がかり。一方、インドネシアは構造改革を進めてマクロ環境が改善に向かっており、株価や通貨は上昇気味。

インドでは構造改革が進行中で、今年度は財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」が大幅に縮小する見通し。また、中国からの悪材料が出ればインドに資金が向かいやすくなるという追い風要因もある。

ブラジルはインフレ高止まりと成長鈍化というスタグフレーションに悩まされており、さらに中国の景気悪化は資源輸出に大打撃を与えるという要素も持っている。隣国ではアルゼンチンやベネズエラで危機が高まっており、回避すべき市場のひとつに数えられるかもしれない。《RS》

関連記事

最新記事