新興国の苦悩と日本の挽回戦略:「通貨安→シェア回復→輸出回復」の経路とは?

2014年2月18日 09:14


*09:14JST 新興国の苦悩と日本の挽回戦略:「通貨安→シェア回復→輸出回復」の経路とは?
米連邦準備理事会(FRB)が量的金融緩和の縮小を継続する方針を明確にしてから、一部の新興国市場から外資流出が加速するとの懸念が急速に浮上しました。これが新興国通貨の下落を促し、引いては各国・地域で輸入インフレへの不安が強まることになりました。

新興国は米国が量的金融緩和を実施している間、銀行融資などの与信を膨らませました。ただ、量的緩和が縮小に向かうと資金の流れが逆流し、通貨下落を阻止するために一部の新興国では中央銀行が積極的に利上げを行っています。これが内需の低迷を招き、過去に膨らんだ融資を次々と焦げ付かせています。

一部の新興国ではインフレが慢性化しており、通貨下落がこれを助長する恐れが高まっています。インフレ高止まりの背景は各国・地域における個別の経済構造が原因となる場合が多く、インドやインドネシアでは政府による構造改革が今になって急ピッチで進められています。

現在は世界的に生産能力が低下傾向にあります。英フィナンシャル・タイムス(FT:電子版、17日付)は、生産能力に改善が見込みにくい場合、各国・地域は主に通貨安で市場シェアの挽回を図ろうとすると指摘しています。

現状の新興国では、通貨安によるシェア拡大という戦略を取ることができません。一方、インフレを歓迎する日本はこの戦略を取るのに最適な位置にあり、(政府や日銀は否定していますが)積極的な円安政策を進めています。

FT紙は「ある日本の大手企業が最近、一部の生産を新興国から日本本国に戻すことを発表した」「これは1企業の動きであることは認めるが、円安が継続し、新興国の治安悪化や政治不安が続けば、(生産の日本回帰が)トレンドになる可能性が残されている」と指摘。

この環境の変化が日本の輸出を後押しし、成長を押し上げることが期待できます。

(フィスコ・リサーチ・レポーター)《RS》

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