業績上方修正と並んで自己株式取得に限定された個別物色相場で第2の味の素、ゼニス羽田を選別=浅妻昭治
2014年2月17日 10:45
<マーケットセンサー>
3月期決算会社の第3四半期(4~12月期、3Q)業績の発表が、ほぼ一巡した。新興国通貨の下落や米国景気の先行き懸念で全般相場が波乱展開するなかで進行し、3Q決算発表とともに本格スタートすると期待された業績相場は空振りに終わった。ただ、上方修正銘柄には素直に好感高するなど、市場にはまだ待機資金が、スタンバイしていることを示唆した。また業績上方修正とともに、3Q決算発表で目立ったのが、自己株式取得枠を設定する企業が相次いだことであり、これにも株価は歓迎する買い物が増勢となった。期待された業績相場は、業績上方修正と自己株式取得に限定した個別物色・逆行高展開にとどまったわけだ。
このなかで自己株式取得は、今年に入って自己株式の公開買い付け、自己株式立会外買付取引、優先株取得を含めて66社が発表しているが、このうち58社が、3Q決算が本格化した今年1月20日以降となっている。もちろん、自己株式取得の理由はさまざまである。かつては、「業績下方修正3点セット」と囃し立てられた自己株式もあった。
業績を下方修正した会社が、同時に業績の落ち込みをカバーする中期経営計画の策定と経営責任を明確化する役員報酬の減額、さらに株価急落を未然に防ぐ自己株式取得を発表したことを指したものだが、このところこまで株主に頭を下げてお詫びする殊勝な心掛けの経営者の少数派に変わっているようだ。前週末14日の後場取引時間中に味の素 <2802> が、今3月期業績の下方修正とともに自己株式取得を発表、株価は、今年1月22日にiPS細胞関連人気でつけた昨年来高値に肉薄する人気となったが、とくに役員報酬の減額も中期経営計画の策定を伴うことはなかった。
この業績下方修正と自己株式取得のセットとは別に、自己株式取得枠の設定にはさまざまなケースがあった。NTT <9432> は、3800万株(発行済み株式総数の3.34%)、総額2000億円の自己部式取得を実施するが、これは政府保有株が1500億円強売却されることに備えたもので、日立製作所 <6501> の500万株(同0.1%)、50億円は、株式分割で完全子会社化する子会社株主へ交付する株式の調達を目的としており、ワタミ <7522> の280万株(同7.0%)、45億円の自己株式立会外買付取引も、業務提携を解消したソニー生命の保有する自己株式を買い受けるためのものである。
このことは、自己株式取得枠の設定は、株主価値の向上と需給好転要因として株高につながる材料になることは間違いないが、すべてがこのケースに当てはまらないことも表しているわけだ。業績下方修正でも年初来高値に迫った味の素や、自己部式取得で今年もっとも高いパフォーマンスを示現したゼニス羽田 <5289> (東2)のような銘柄にアプローチできるような選別眼が求められることになる。ゼニス羽田は、自己部式取得と今3月期業績の2回目の上方修正を同時に発表し、株価は、ストップ高を交えてわずか4営業日で昨年来高値270円まで53%高の急騰を演じた。
そこで今年1月以降に自己株式取得を発表した66社のなかから、今後、好パフォーマンスが期待できる銘柄を選別してみたい。業績下方修正とセットの銘柄や政策目的の銘柄、すでに立会外買付取引を終了した銘柄を除外し、純粋に株主への利益還元を図ることを目的にする銘柄に絞り込むと、業績が順調に推移し、投資採算面でも割安に放置されて銘柄がセレクトされてくる。自己株式の取得期間がなお継続中で、仮に今後も株価の波乱が続いた局面でも下支え効果を発揮するはずで、逆張り対応で妙味があるはずだ。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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