乳がんの死亡率はマンモグラフィー検査では下がらない 海外有力紙の報道とは

2014年2月14日 15:00

 マンモグラフィーによる検査を毎年受けても女性の乳がんがんによる死亡率を下げる役には立たないという新しい研究結果が、イギリスの医学誌に発表された。触診では発見されないほど小さい内に乳がんを発見することには死亡率を減少させるという効果はないという結論が導出されたと、複数の海外紙が報じている。

【四半世紀にわたる大規模な調査の結果】

 カナダ国民胸部スクリーニング研究は、カナダの6つの地方で1980年から85年に開始された。9万人近くの40歳~59歳の女性をランダムに被験群と管理群に振り分け、被験群には毎年マンモグラフィー検査を行い、管理群は従来の触診のみとした。25年間にわたる追跡調査の結果、最新のデータでは、発がん率、死亡率とも、両群ほぼ同一であった。

 25年生存率は、被験群において乳がんが発見された女性では70.6%、管理群では62.8%という数字であったとCNNは報じている。研究チームは、この差異は実質的に生存期間が延びたことを意味するのではなく、乳がんであると認識してからの期間が長かっただけであり、マンモグラフィーが明確な利益をもたらすというのは錯覚に過ぎないと結論付けた。

 ロイター紙によると、理由の一つは、がんがある程度以上攻撃的で、治療に対する抵抗力があるならば、どの段階で発見されようと致死的なものとなることだ。それとは逆に、発見されたがんの22%は、仮にそれを放置したとしても、その女性の生涯にわたって危険を及ぼすことはない、すなわち過剰診断であると調査チームは説明している。むしろ、その結果行われる、化学療法や放射線療法、手術などの治療が、身体に不要なダメージを与えるかもしれない。

【マンモグラフィーの有効性は過去のものか?】

 以前に行われた研究はマンモグラフィーの有効性を示しているが、ニューヨーク・タイムズ紙は「疾病の危険性について何も認識がなければ、マンモグラフィーが有効であるという可能性はある」という専門家の言葉を引用する。今日一般的に使われているタモキシフェンという薬のような、より良い治療法がある場合には、早期発見はあまり重要ではない。また、今回の研究の対象となった女性は、しこりを無視する傾向にあった先行研究の対象女性と異なり、乳がんとその危険性を認識していた。

【調査結果に対する疑問の声も】

 CNNは、アメリカ放射線医学会と胸部画像学会が、この新たな研究について「信用できない、ミスリーディングの分析で信用を深く傷つけた」との声明を出したと報じる。これらの専門家は、今回の研究結果は、画質の低い画像機器、訓練されていない技術者、「一世代古い」技術によるもので、研究における被験群と管理群の無作為化にも欠点があると批判する。多くの女性の乳がんによる不要な死の危険性をいや増す可能性があるため、この結果はスクリーニング検査ポリシーの策定に用いられるべきではないという。

 ロイター紙は、年例のマンモグラフィー検査は、乳がんで死亡する確率を下げるための具体的な行動をとっているという感覚を女性達にもたらすであろうと分析している。CNNは「女性たちは充分なインフォームを受けて決断するべきだ」という専門家の言葉を引用する。

関連記事

最新記事