消費増税後の住宅業界は「付加価値」で勝負
2014年2月9日 20:54
国土交通省が先日発表した2013年12月の建築着工統計調査によると、新設住宅着工戸数は前年同月比18パーセント増で、16ヵ月連続の増加となった。その内、持ち家は前年同月比で19.1パーセント増、賃貸はとくに好調で前年同月比129.8パーセント増、ただし分譲マンションは3ヵ月連続で減少傾向にあり、前年同月比で7.4パーセント減となっている。
住宅業界全体で見ると概ね好調といえるものの、4月からの消費増税や、3月末で住宅用太陽光発電導入支援制度の補助金申込の受付が終了するなど懸念材料も多く、じわじわと逆風が吹き始めている。
ところが、住宅市場は今後どんどん冷え込んでいくのかというと、実はそれほど深刻な状況までにはならないだろうというのが大半の見解のようだ。厳しい状況は避けられないとしても、その状況は以前から予測されていた事の範疇で、とくに消費税率引き上げの影響による駆け込み需要の反動減に関しては、前回の税率引き上げ時の反省点も活かし、業界だけでなく、すまい給付金制度や住宅ローン減税など、政府ぐるみでの対策が打たれていることで緩和されると見られている。
また住宅メーカー各社からも、駆け込み需要が落ち着く頃合いをはかって、住む人にとって付加価値を生み出すような商品を続々と発表していることから、急激な需要の落ち込みは回避できると思われている。
そんな「付加価値」の一つが、賃貸住宅や賃貸併用住宅、二世帯住宅への建て替えだ。
2015年1月に相続税の税制改正が予定されているが、この改正によって基礎控除が現行のおよそ6割の水準に引き下げられる可能性が濃厚で、それに伴って相続税の課税対象者が増える可能性が高まっている。とくに目立った財産がなくても、持ち家があるだけで相続税の対象者になりかねないのだ。
これを上手く回避する手段の一つとして、「小規模宅地等の特例」がある。これは、賃貸住宅や賃貸併用住宅、二世帯住宅などに建て替えることにより、課税対象となる土地評価額を8割減額できるというもので、相続税制の改正に対抗する手段として、急速に注目を集めているのだ。大手ハウスメーカーもこれに対応した商品を市場に投入し始めている。
しかし、賃貸併用や二世帯を考えると「小規模宅地」といえど、そこそこの大きさが必要になる。また、将来を見据えた住宅ももちろん大事ではあるが、30代前後の若い世代にとっては、子供の養育費と住宅ローンを両立させるのはなかなか大変で、月々の返済額や維持管理費、光熱費等、目先のことが気になるのも実情だろう。そこでもう一つのトレンドが、売電などの仕組みを上手く活用できる住宅だ。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を利用して、太陽光発電システムなどで発電した電力を電力会社へ売却する、いわゆる「売電」については認知度も高く、すでに利用している家庭も多いだろう。売電の価格は、1kWあたり、おおよそ40円弱程度。2012年度の実績で1kW42円、13年度は1kW38円となっている。
家庭に導入されている太陽光発電で最も多いのは3~4kWのシステムといわれており、4kWのシステムで余剰電力60パーセントを1kW35円で売電したと仮定して簡単に試算してみると、年間約84,000円の売電収益が得られることになる。さらに自家消費分も創電によって割安になることから、全体の収益としては年間10万円を超える経済効果が期待できる。
各住宅メーカーも、これを利用しながら独自色のある商品を打ち出している。たとえば、日本最大のホームビルダー集団・ジャーブネットの主宰でも知られるアキュラホームでは、太陽光発電を組み込んだ「木のスマートハウスNEO」を3月31日までの期間、先着500棟限定で発売しているが、こちらの商品は、日照をコントロールする外観デザイン、風の通り道を考えたプランニングなど、自然と共に暮らすことをテーマにエコ設計が施されたもので、設備機器に頼りすぎることなく自然の力を最大限に活用し、快適かつランニングコストを抑えた木造住宅となっている。さらに驚くべきは、住宅ローンの控除・すまい給付金・創エネルギー設備の付加による電気料金の節約によって、当初3年間の月々の実質負担額を1万円台にまで抑えられるという。
また、ミサワホーム<1722>からは、一般家庭用では珍しい10kW以上の大容量の太陽光発電システムを搭載することにより、100パーセントの売電も可能にした「ソーラーマックス」や、大和ハウス<1925>では、戸建て住宅商品「xevo(ジーヴォ)」を建設する顧客に対し、太陽光発電システムを最大40パーセント(建設地が岩手県・宮城県・福島県の場合、最大60パーセント)割引するキャンペーン「太陽割」を展開していたり、メーカーによってもサービスの打ち出し方は様々だ。
ただ、太陽光発電や各種のキャンペーンを利用することで、引き上げられる消費税率分は充分に吸収されているのが現状のようで、購入を検討している人にとっては、メーカーのサービスが手厚い今が買い時といえるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)