岡山大学、鎮静薬の局所投与で炎症抑制の薬理作用を発見
2014年2月8日 17:21
岡山大学の歯科研究グループは7日、集中治療室など広く臨床で使用されている鎮静薬の一つである「デクスメデトミジン」を局所に投与することにより、投与部位の炎症を抑制するという新たな薬理作用を世界で初めて明らかにしたと発表した。
研究グループは、岡山大学病院歯科麻酔科の樋口仁講師、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯科麻酔・特別支援歯学分野の助川信太朗大学院生、宮脇卓也教授、同研究科口腔病理学分野の長塚仁教授ら。
同研究グループは、炎症を引き起こす物質であるカラゲニンとカラゲニンにデクスメデトミジンを混ぜたものをそれぞれマウスの足に注射し、その腫れの程度、炎症に関わる細胞(白血球)の数、炎症に関わるタンパク質の発現を比較した。
その結果、デクスメデトミジンを注射した足では、炎症による腫れが有意に抑制された。炎症に関わる細胞の数も減少し、さらに炎症に関わるタンパク質の産生についても、デクスメデトミジンを投与した足では有意にその産生が抑制された。これによりデクスメデトミジンを局所に投与すると、投与部位の炎症を抑制するというデクスメデトミジンの新たな薬理作用を報告した。
この研究成果は、2014年2月発行の国際雑誌『Anesthesia and Analgesia』に掲載された。
同研究グループはこれまでに、デクスメデトミジンを局所麻酔薬に添加することにより局所麻酔の効果が増強されることも報告しており、デクスメデトミジンを局所麻酔薬に添加することにより、抗炎症作用を有する革新的な次世代の歯科用麻酔剤の開発を目指す。
現在、歯科治療に使用されている局所麻酔剤は、局所麻酔薬のみでは麻酔効果が弱いため、麻酔作用を増強するために血管収縮薬が添加されている。しかしこの血管収縮薬には心拍数をあげるなどの副作用があり、高齢者や心疾患を有する患者さまでは使用に注意が必要。
さらに局所麻酔が必要な歯科手術(抜歯、歯科インプラント手術など)においては、手術の後の炎症による腫れや痛みはどうしても避けられない。そのため局所麻酔薬に麻酔作用の増強と抗炎症作用を付加でき、副作用の少ない新たな添加薬の開発が望まれていた。
今回の研究は、デクスメデトミジンを局所へ投与することにより抗炎症作用を発揮するという新しい薬理作用を証明し、デクスメデトミジンが局所麻酔薬への新たな添加薬の候補となることを世界で初めて示したという。
同研究グループは、副作用が少なく、さらに抗炎症作用を有する革新的な次世代の歯科用麻酔剤の開発を目指して精力的な研究を進めているという。