健康長寿社会の実現に向けて創薬など推進 産総研と慶大が協定
2014年1月31日 23:37
近年、医療技術は目覚ましい発展を遂げている。分子生物学の発展による分子標的治療薬の開発や遺伝子工学の技術を用いたゲノム治療、さらには情報工学やロボット工学を医療分野へ応用する動きも広がっている。このほど結ばれた、産業技術総合研究所と慶應義塾大学医学部・同学病院の連携・協力に関する締結によって、医療の技術革新はさらに加速度を増すことが期待される。
産業技術総合研究所は日本の産業を支える、環境・エネルギー、ライフサイエンス、情報通信・エレクトロニクス、ナノテクノロジー・材料・製造、計測・計量標準、地質という多様な6分野の研究を行う我が国最大級の公的研究機関だ。一方の慶應義塾大学は私大の雄であると同時に、医学部と大学病院は日本の医療技術をけん引するリーダーであることは間違いない。両者が協定を結ぶことで、今後はどのようなことが期待されるのだろうか。
産総研のメリットとしては、臨床現場における診断・治療技術の実証研究が促進されるほか臨床サンプル、情報も入手しやすくなる。また医療現場がどのような課題を抱えているのか、生の声を手に入れて情報共有を図ることが可能だ。
慶大医学部・病院のメリットは、産総研が有する広範な先端技術をいち早く医療へ導入・活用することができるようになることが挙げられる。また同学における医工連携オープンイノベーション拠点形成を加速し、OJTによる若手研究者の育成も期待できる。
共同研究の第一弾としては、疾患診断用の糖鎖バイオマーカーの開発を推進する。産総研の糖鎖解析技術と慶大医学部の先端代謝解析技術や定量的質量分析イメージング技術を融合し、慶大病院のヒト臨床サンプルを解析することで、これまで臨床バイオマーカーが乏しかった悪性腫瘍、慢性炎症性疾患、感染症について、早期診断や薬剤感受性予測に活用できるマルチバイオマーカー研究開発を行う。
同時に既存薬の新規薬効を探索するドラッグリポジショニング技術の開発、再生医療分野における連携も検討を進める。人材交流については、慶大医学部内に産総研・慶應連携ラボを設置し、研究課題の発掘などに取り組む。
疾病の早期診断・早期治療やテーラーメイド医療を実現するには細胞単位での技術研究が欠かせない。ライフサイエンス分野でも多くの実績がある産総研と、豊富な臨床経験を持つ慶大医学部・病院の連携は、今後の医療技術にさらなる革命をもたらすだろう。(編集担当:横井楓)