ソニー、ジャンク級に格下げ 海外経済紙が指摘する、独特のジレンマとは?
2014年1月28日 22:39
大手信用格付け会社ムーディーズ・ジャパンは27日、ソニーの投資格付けを「Baa3」からジャンク級(投機的格付け)の「Ba1」に引き下げたと発表した。主力の家電事業の不振や、競争が激化するマートフォン・タブレット端末事業での出遅れがその理由に挙げられている。
【テレビなどの家電部門の不振に加え、スマホ・タブレットでも後塵を拝す】
フィナンシャル・タイムズ紙によると「ソニーのテレビ、デジタルカメラ、パソコンなどの家電事業の大半が技術的なリーダーシップを失い、他社との激しい競争にさらされている」と、ムーディーズは見ているという。
海外メディアはこのニュースを受け、テレビに代表される「従来型」の家電事業は世界的に凋落の一途にあり、一般消費者の需要は、スマートフォンやタブレット端末に集まっていると揃って指摘する。テレビやパソコンの売上不振に加え、スマホ・タブレット端末事業でライバルのアップルやサムスンの後塵を拝するソニーは、これらのダブルパンチを受けているという論調が支配的だ。
【XperiaやPS4で不振のPC事業などの挽回を目論むが・・・】
フィナンシャル・タイムズ紙によると、ソニーの平井一夫社長兼CEOは、高性能なカメラレンズとスマートフォンのXperiaシリーズが、ソニーグループに革新をもたらすと力説している。これらと『プレイステーション4』の好調な売上がソニーを蘇らせると、平井CEOは期待を込める。
しかし、同紙は「ソニーは、従来型の家電事業に重きを置くパナソニックやシャープにはない独特のジレンマを抱えている」と指摘する。テレビやデジタルカメラでの成功は、スマートフォンのような新しい事業の犠牲のうえに成り立つとして、“二兎を追う者は一兎をも得ず”を示唆している。
平井CEOは、家電からモバイルフォンとエンタテイメントへと利益を転換することで再建を図っているという(ブルームバーグ)。一方で、大画面・高画質の4K液晶テレビに赤字が続くテレビ部門の命運をかける動きもあると報じられている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)も、「例えばPCビジネスからの撤退をも検討すべき段階に来ている」というアナリストの見解を掲載。パソコンやゲーム機がスマートフォン・タブレットに取って代わられつつある原状を直視し、大胆な事業転換をすべきだとしている。
ブルームバーグの報道によると、2013年の世界のパソコンの出荷は、モバイル端末への移行の影響で10%減少した。ソニーも10月、自社のPC『Vaio』の販売予測を620万台から580万台に下方修正した。ソニーはその際、パソコン事業について「根本的な再構築が必要だ」と見解を示したという。
【当面は海外の厳しい見方が続くか】
今回の格下げを裏付けるように、海外のソニーの業績への見方は厳しい。WSJによると、多くのアナリストは、ソニーの今期の収益予想の下方修正を予測している。例えば、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、ソニーの年間純益を約170億円と見積もるという。これはソニー自身が目標とする300億円を大きく下回る。
また、ロンドンとニューヨークに本拠を置く格付け会社フィッチ・レーティングスは、既に2012年にソニーをジャンク級にに格下げしている。一方、米スタンダード&プアーズはジャンクの2段階上の「BBB」に格付けている。
ソニーの迷走はいつまで続くのか。ムーディーズは「ソニーの収益性はテレビとパソコンの売上が回復しない限り、弱く不安定にとどまりそうだ」としている。XperiaやデジタルカメラのQXシリーズなど「良い新製品が出てきている」としながら、「数多くのライバルがさまざまな製品を出していく中で、それらが競争力をどれだけ長く維持できるかは、不透明だ」と分析している。