日本の貿易赤字、過去最悪に 海外紙がそろって指摘する危険とは?
2014年1月27日 22:09
昨年12月の日本の貿易収支が過去最悪の赤字となったことが、27日に発表された財務省の報告で明らかになった。2013年全体でも過去最悪の赤字が確定した。海外メディアは、その主な原因を、円安の複合的な影響や、原発停止による燃料の需要増にあるとみている。
【円安による表裏一体の影響】
昨年12月の貿易赤字は約1.3兆円で、前年の約2倍に膨らんだ。輸出は15.3%伸びたが、輸入が24%増と上回り、トータルで巨額な赤字となった。2013年全体でも、過去最悪の約11.4兆円の赤字を記録。これで3年連続の赤字となり、連続赤字記録も更新した。
輸出は10ヶ月連続の増加を記録し、好調を維持している。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、その要因の大部分は輸出量の増加によるものではなく、円安によって額面が増えた影響が大部分だと指摘する。ロイターは自動車輸出の好調もプラス要因に挙げた。
しかし、円安は、輸入においてはコスト上昇を招き、マイナスに作用する。このマイナス面がトータルでプラス面を上回ったというのが各メディアの分析だ。WSJはこれを「アベノミクスによる円安の表裏一体の影響」と表現した。
【原発停止による燃料の輸入増が原因】
円安とともに輸入コストの拡大に大きく影響しているのが、石油、天然ガスなどの燃料価格とその輸送コストの上昇だ。ブルームバーグは「昨年、原油の輸送費が16%、液化天然ガスが18%上昇したことにより、日本の輸入額がインフレ化した」と伝えた。
さらに、原発停止と貿易赤字の関連性を海外メディアは揃って指摘する。
ロイターは日本の昨年12月の輸入額が前年比で24.7%上昇したことを挙げ、そのおもな要因は「2011年の福島の悲劇で喪失した核エネルギーを補うための化石燃料の需要増」だとしている。WSJは、原発停止により化石燃料の需要増に歯止めがきかない状態になっており、アベノミクスによる円安がさらにその輸入コストを上げていると指摘した。
ブルームバーグはさらに、2/9投開票の東京都知事選に立候補している細川護煕元首相が、「脱原発」を掲げていることに触れた。もし、細川候補が当選すれば、原発再稼働を経済再建の鍵とするアベノミクスへの対立項が築かれるだろうとしている。続けて、次のような三菱UFJリサーチ&コンサルティングの中田一良副主任研究員のコメントを紹介した。
「原発が再稼働すれば、燃料の輸入量は減る。ただし、再稼働のペースとタイミングによっては貿易収支にすぐには反映しないだろう」
【貿易赤字は日本のステータス低下を強調する】
「現時点で、日本がいつ貿易赤字を脱することができるか予想するのは難しい」こうブルームバーグのインタビューに答えたのは、農林中金総研の南武志主席研究員だ。
南氏は、さらに悪影響が広まることを懸念する。「貿易赤字の主要因が日本の高いエネルギーコストだと見られれば、世界の企業は日本に生産拠点を置くことに躊躇するでしょう。それは、アベノミクスの土台を崩す結果を招くかもしれません」。
WSJは、日本の記録的な貿易赤字の拡大は「巨大貿易国家日本のステータス低下を強調するものだ」と記事を結んでいる。