新興国の混乱:米緩和縮小や中国成長不安より怖いのは中国の「影の銀行」

2014年1月27日 10:07


*10:07JST 新興国の混乱:米緩和縮小や中国成長不安より怖いのは中国の「影の銀行」
アルゼンチン通貨ペソの暴落を受けて新興国通貨に対する投資家の不安が一気に高まり、先週末の外国為替市場ではブラジルレアル、南アフリカランド、インドルピー、ロシアルーブルなど複数の通貨が大きく売り込まれた。

今週開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で毎月の資産購入額が減額されるとの思惑、さらに中国の成長ペースが鈍化するとの懸念が新興国売りにつながったとの見方が目立つ。

一部では米連邦準備理事会(FRB)が新興国の成長不安から量的金融緩和の縮小(テーパリング)を見送るとの予想が出ている。ただ、テーパリングだけが新興国通貨の動揺を引き起こしているとは言えず、次回のFOMCでは資産購入金額が現在の750億米ドルから100億米ドル減らされる公算が大きい。

新興国では昨年5月、バーナンキFRB議長がテーパリングに向けた工程表を明らかにした際に一部通貨が急落したことが記憶に新しい。新興国で経常赤字など財政状態の悪い国・地域は5月に苦い経験を受けており、その後は米テーパリングによる金融市場混乱に備えた準備を怠っていない。

例えば、インドネシアでは政策金利の引き上げ、インドでは利上げや貿易収支の改善、ブラジルでもスワップ取引を通じたレアル安防衛策などが取られてきた。このため、今週のFOMCでテーパリングが決定されたとしても、それだけで新興国の金融市場が動揺すると見るのは誤っている可能性が高い。

中国の成長ペース鈍化についても、これまでの高度成長を維持できないため政府が「持続可能な成長」に向けてかじを切っている最中。また、HSBCが先週発表した1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が6カ月ぶりの低水準に落ち込んだことについても、季節要因が絡んでいたためとの指摘が目立つ。

中国要因についても市場が過度に反応しているようだが、中国については「シャドーバンキング(影の銀行)」問題が市場を本気で震撼させる可能性を秘めている。中国の成長ペース鈍化や構造改革で、理財商品が投資するセクターからのリターン回収が見込めなくなり、政策自体がデフォルト(債務不履行)を誘発するというジレンマが警戒される。

目先は今月31日に償還を迎える信託商品で、これは中誠信託が組成し、中国工商銀行が富裕層に販売したもの。デフォルトリスクの発生した同商品の償還について、工商銀行は「主な責任」は負わない立場を示していたが、ここにきて一定の責任を負うとの報道が出てきている。あす28日には具体的な説明が出されるようで、ここで不安が一段と高まれば新興国売りに一段の弾みが付く公算が大きい。《RS》

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