【小倉正男の経済羅針盤】ガラケー法人税と企業の「祖国愛」

2014年1月25日 16:26

■「法人税引き下げに踏み込む」は本気か

 安倍晋三首相は、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)でスピーチした。そのなかでオヤと思わせたのは、“法人税の実効税率引き下げに踏み込む”、と表明したことだ。

 グローバルな競争を意識して割高の法人税を見直す。それにより外国企業の日本への投資を呼び込む、というのである――。これはいわば「国際公約」という格好になる。

 一般的には、法人税実行税率引き下げには消極的と見られていただけに、本気なのかやや懸念もないではない。 だが、法人税率が世界的に見て高いのは事実であり、本気で取り組まなければ外国企業は日本をパスすることになる。

 「バイ・マイ・アベノミクス」と胸を張っても、割高な税金に手が付けられないでは「バイ・バイ・アベノミクス」になりかねない。それがこれまでの現実である。

■“企業は税金を払う国を選ぶ”という圧力

 「このままでは我々は祖国を去るしかない――」 その昔、ドイツが法人税を下げたのは、ベンツ、BMWなどの国を代表する大企業が、本社や工場を海外に移すしかない、と表明したことが圧力となった。

 法人税の安い国で税金を払う。  つまり、企業は税金を払う国を選び、グローバル競争力を養う――。

 企業に国を選ばれたら、元も子もない  結局、ドイツは法人税を下げ、消費税を上げる道を選択した。

■「祖国を裏切らない」を前提にした“ガラケー法人税”

 日本の法人税は、日本の企業は“祖国を裏切る”ことはないということを前提にしている。グローバル競争といっても、「祖国を去る」ことまではない、という実効税率になっている。

 以前にトヨタ自動車などが社長交代で、新社長の披露パーティなどが行われた時のことである。そのご祝儀に徴税が行われた、というのである。

 ご祝儀も、個人になるのか、企業になるのか、ともあれ所得になるのだから徴税は合法であるのは間違いない。 コンプライアンスからみれば正当だが、少々のことなら目をつぶるという手も大人としてはアリではないか。

 「我々は祖国を去るしかない――」。そう企業に言われたら、地域にしても国家にしても大きな痛手になる。 企業の「祖国愛」を信じる余り、あまりにも厳密な徴税や割高な税制を強いるはよいことではないに違いない。

 税金もまたガラパゴス化(=ジャパゴラス化)、つまり“ガラケー”が許されないということか・・・。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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