中国、動画アップに「実名」義務化 著作権対策ではない、政府の真の狙いとは

2014年1月23日 20:20

 中国当局は、中国国内で動画サイトに動画をアップロードする際に、実名登録を必須とする規制を導入した。

 中国の動画サイトYoukuといえば、著作権意識に乏しい中国らしく、日本のアニメやドラマをはじめとした違法動画が、無数にアップロードされるサイトとして、一部では有名である。日本のネットユーザーの中にも、利用したことのある人は少なからずいることだろう。

 けれども、中国のネットユーザーにとっては、このような動画サイトも、単に娯楽を追求するだけの場ではないようだ。

【動画サイトは数少ない言論の場?】

「中国のネットユーザーにとって、動画サイトは、自国の政権への不平・不満を表現したいとき目を向ける、人気の高い発言の場」だと、イギリスのニュースサイトWired.co.ukは述べる。ロイターによれば、政府役人や当局によって行われている汚職、不正、職権乱用などについてまとめた動画を、ユーザーがアップロードして、そこにさまざまな意見や批判がコメントとして寄せられるという。中国に5億3800万人いるネットユーザーのうち、動画サイトの利用者は4億2800万人にも上るというから、その影響力は想像に難くない。

【ネットを押さえつける、検閲と弾圧】

 動画サイトがこのような役割を担っている背景には、本来、こういった言論の受け皿となるはずのソーシャルメディアやマイクロブログに対する締め付けが、2012年11月の習近平体制への移行以来、とみに強まっているという事情がある。

 国際的な人権監視団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告によると、昨年9月、中国の最高人民法院と最高人民検察院は、刑法の既存の条項をネット上の表現にも適用する、新しい法解釈を示した。それにより、例えば、ネット上で「流言」が500回以上転載されたり、5000回以上閲覧された場合には、投稿者は法的措置を受けることになる、という。

 また、報告によると、当局は何百人というネットユーザーを何日間も拘留し、市民ジャーナリストの運営する、「違法」とされるニュースサイトを100以上閉鎖し、ネットにおける論客として有名な薛必群氏を拘束したという。

【中国の「とにかくふたをしろ!」方式】

 検閲されているのはネットだけではない。Wired.co.ukの報道によれば、今回の規制を公布した国家広播電影電視総局は、ラジオ、テレビ、衛星放送、ネット放送において、中国政府の不利益となる可能性のあるテーマ一切を検閲しているという。

 これらのネット・メディア統制は、国民の反政府感情を抑え込むためだとロイターは分析する。

 国民が声を上げるのを抑えようと規制を繰り出す政府に対して、中国国民はこれまで、さまざまな手段を用いてうまくすり抜けてきた。けれども、法的な罪に問われる件数が増えているのは、表現の自由が中国において、ますますリスキーで、手に入りにくくなる一方であることの心配なしるしだ、とWired.co.ukは述べている。

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