【日経平均】日銀会合結果発表後の急落を乗り越え25円高
2014年1月22日 20:54
3連休明けの21日のNYダウは44ドル安。ベライゾン、ジョンソン&ジョンソン、トラベラーズの決算内容は市場予測を上回ったが「先行きの収益の不透明感」で下落。要するに地合いの悪さに流されたわけで、前週のゴールドマンサックスの減益決算が尾を引いたり、朝のウォールストリートジャーナルに28~29日のFOMCでの量的緩和縮小幅が大きくなるという記事が出たり、IMF(国際通貨基金)の世界成長率見通しでアメリカの2015年の成長率が下方修正されたりで、一時は140ドルを超える下落を喫した。しかしNASDAQは上昇。22日朝方の為替レートは、ドル円は104円台前半、ユーロ円は141円台前半で、今週は大きく動いていない。
日経平均は46.95円安の15749.01円で始まり、午前9時台はマイナス圏で乱高下し、15780円を突破したかと思えば15733円まで下落。一方、TOPIXはマイナスで始まりながらプラスに浮上して徐々に上げ幅をひろげるという、日経平均とは世界が違うような値動き。豪ドルがオーストラリアの消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予測を上回ったのを好感して急騰すると日経平均も10時17分にプラスに浮上。上海市場の続伸スタートにも後押しされて15800円台に乗せたかと思えば11時台にはマイナス圏深く下落するなど乱高下が治らない。それでも前引けでは15801円とプラスに戻した。その間もTOPIXはずっとプラスだったが、1300の大台にタッチはしても、なかなか定着しなかった。
乱高下の原因と思われた日銀の金融政策決定会合の結果が昼休みに出て、金融政策も、2015年度に+1.9%の物価目標も現状維持。景気判断に「消費税率引き上げ前の駆け込み需要」という言葉が入った。4月以降はその反動の影響を受けつつも基調的には緩やかな回復を続けるというのが日銀の先行き見通しだが、はたしてどうなるか。ドル円は円高方向に振れて日経平均、TOPIXはともに後場マイナスで始まり次第に下げ幅を拡大。午後0時48分に日経平均は15637円、TOPIXは1287まで下落した。今頃から追加緩和策を出すと肝心の4月以降に撃つタマがなくなるが、マーケットは「いつやるか? 今でしょ!」と昨年の新語・流行語大賞で催促、していたかに見えた。
しかしそれも、「イベントドリブンで先物売りを仕掛けて利食い」という謀略だったのか、日経平均は1時6分に15631円の安値をつけた後は一本調子で上昇して値を戻す。2時台には上昇ピッチを早めて15800円台のプラスに乗せた。その間、ドル円は104円台後半まで円安が進行し、TOPIXも同じ曲線を描いて1300に乗せるという「健康的」な上昇パターン。15870円の高値をつけた後の日経平均は下げてもマイナスにならず、終値は25.00円高の15820.96円で今年初めて続伸した。後場の急落で日中値幅は239円と大きくなった。TOPIXは+3.68の1299.63で、惜しくも1300台で終われない。売買高は26億株、売買代金は2兆4539億円だった。
値上がり銘柄は851、値下がり銘柄は759で数字は近かったが、業種別騰落率はプラス23業種、マイナス10業種と差がついた。プラス上位はその他製品、電気・ガス、その他金融、証券、鉱業、海運など。マイナス下位は石油・石炭、金属製品、小売、パルプ・紙、建設、保険などだった。
日経平均採用225種で値上がりは118銘柄、値下がりは91銘柄。プラス寄与度1位はTDK<6762>で+12円、2位は三菱UFJ証券がレーティングを2階級特進させて140円高の電通<4324>で+5円。上位10銘柄に「四天王」がいなかったが、それはマイナス寄与度の1~3位のほうに入っていて日経平均を18円押し下げていた。それに打ち勝っての25円高もまた健康的。
メガバンクは揃って反発。ゴールドマンサックスが「買い継続」としたみずほ<8411>は2円高。三井住友FG<8316>は54円高。三菱UFJ<8306>は8円高。証券セクターは野村HD<8604>2円高、大和証券G<8601>19円高、SBIHD<8473>78円高と軒並み上昇していた。
トヨタ<7203>は大発会の週の6270~6300円のボックス圏を突き抜けて上昇し40円高で売買代金1位。しかし時速60キロで走行中でも衝突を回避できる対人自動ブレーキを開発したホンダ<7267>もマツダ<7261>も8円安で、三菱自動車<7211>は12円安。日産<7201>3円安、富士重工<7270>36円安など自動車は全体的にはふるわなかった。パナソニック<6752>は前日のレーティング「2階級降格」ショックは癒えず32円安で5日続落。シャープ<6753>3円安、ソニー<6758>15円安、日立<6501>6円安、東芝<6502>3円安、NEC<6701>4円安と電機も自動車同様に不振だった。
セイコーエプソン<6724>はJPモルガンがレーティングを引き下げて73円安。半導体のルネサスエレクトロニクス<6723>は国内社員数の約4分の1の5400名の追加人員削減を発表し24円安で値下がり率9位。電子部品関連は、野村證券とクレディスイスがダブルで目標株価を引き上げたTDK<6762>は310円高で昨年来高値を更新し値上がり率16位だったが、上には上がいる。日本電産<6594>は決算発表を前に、ホンダエレシスを買収した効果が評価されたのか、永守社長のアナリスト受けが良いせいなのか、前景気をあおるように野村証券、JPモルガン、クレディスイスがトリプルで目標株価を引き上げ125円高で連日の昨年来高値更新。この銘柄の決算発表は3ヵ月ごとに来るお祭りのようになっている。
前日、JPモルガンがレーティングを引き下げて下落したオークマ<6103>は、この日はみずほ証券がレーティングを2階級特進させ69円高と急反発し値上がり率14位。株を持つ人はアナリスト不信症にかかりそう。上海総合指数が大幅上昇しコマツ<6301>は64円高。東京製鐵<5423>は前日大引け後に4~12月期決算を発表し、経常利益は5年ぶりの黒字に転換。事前に観測されていたものの改めて買い直され28円高になった。
武田薬品<4502>は、デンマークのルンドベック社と開発したうつ病治療薬「ブリンテリックス」のアメリカでの販売が始まったというニュースがあり28円高。前日に糖尿病薬が製造販売承認を受けたアステラス製薬<4503>はシティグループ証券が目標株価を引き上げ111円高と続伸。ホウスイ<1352>に低位株物色の矢が当たり後場急騰し25円高で値上がり率3位に入っていた。
三越伊勢丹HD<3099>は「JR大阪三越伊勢丹」の売場の6割を削減して店名も変える話が出て23円安。阪急百貨店と阪神百貨店で包囲攻撃したH2Oリテイリング<8242>は11円高。その「梅田戦争」に大丸梅田店で参戦中のJフロントリテイリング<3086>は13円安。景品表示法違反で改善指導を受けたサンドラック<9989>は80円安だったが、もう1社のドンキホーテHD<7532>は100円高で昨年来高値を更新した。
この日の主役はネット・ゲーム関連。ヤフー<4689>はヤフーショッピングで、審査を通過すれば5分後に出店できるようにすると報じられ11円高。現代は時間との戦いです。都知事選の公開討論会を「ニコニコ動画」で配信するドワンゴ<3715>は150円高。Klab<3656>は57円高で値上がり率12位。マザーズのコロプラ<3668>は560円高で昨年来高値を更新し、売買代金は東証1部トップのトヨタを上回った。任天堂<7974>は610円高と反発し月曜と火曜の下落分の半値戻し。88円高のバンダイナムコHD<7832>は、横浜市の林文子市長に続いて大阪府の松井一郎知事もカジノ誘致の場所や経済効果について具体的に言及したことで、カジノ関連銘柄として買われていた。
ストップ高比例配分の300円高で昨年来高値を更新し値上がり率1位になったボルテージ<3639>は、若い女性向けの「恋ゲーム」シリーズの人気が沸騰して7~12月期の経常損益を従来予想の5000万円の赤字から2億8000万円の黒字に大幅上方修正。だが、本物のリアルな恋愛、結婚、出産をして少子化に歯止めをかけてほしい森少子化担当大臣あたりは、「恋はゲームじゃなく、生きることね」と唄いたい気分かもしれない。(編集担当:寺尾淳)