東京都知事選の「脱原発」関連の再生エネ株は意外や意外、成長戦略株の一角に浮上も=浅妻昭治
2014年1月20日 11:13
<マーケットセンサー>
これはもう立派なバブルといっていいのかもしれない。再生可能エネルギー関連株の急騰ぶりである。一昨年2012年11月の「アベノミクス相場」の初動段階での倉庫株や含み資産株の急伸などを問題なくオーバーパフォームしている。前週初14日以来、新興市場で省電舎 <1711> (東マ)、フジコー <2405> (東マ)、グリムス <3150> (JQS)、ファーストエスコ <9514> (東マ)など、ストップ高に次ぐストップ高を演じる銘柄が続出し、週末の17日には、エナリス <6079> (東マ)が、全市場での売買代金ランキングで、第2位のソフトバンク <9984> に約260億円もの差をつけてトップに躍り出た。
もちろん株価急騰の引き金は、細川護煕元首相の東京都知事選挙への出馬表明である。選挙出馬の最大のマニフェスト(選挙公約)に「脱原発」をアピールし、この選挙戦を小泉純一郎元首相が支援し「元首相連合」の最強のタッグマッチを組み、最有力候補に急浮上して原発再稼働を容認する国のエネルギー政策に風穴を明け、東京電力 <9501> の福島第1原子力発電所の事故から3年を経過して風化し始めている「脱原発」政策の巻き戻し期待を高めているためだ。
この突発した株価急騰劇は、市場には一過性の材料株人気との見方があるのも確かだが、意外や意外、新年相場への一段の追い風になる可能性も否定できない。「アベノミクス」の成長戦略が、「成長戦略国会」を目指した昨年の臨時国会が、「特定秘密保護法国会」に変質して閉会し、安倍首相の靖国神社参拝で国際的な風圧も高まって手詰まり感を強めているなか、新テーマ株買いを拡大する救世主となるかもしれないからである。都知事選の対立候補からは、「脱原発」の選挙公約をあの2005年に小泉純一郎元首相が仕掛けた「郵政選挙」と同様の「ワン・イッシュー」選挙として批判する向きもあるが、「郵政選挙」での圧勝では、外国人投資家が、大挙して日本株買いを強めた経緯もあり、この再現も期待できるかもしれないのである。
ただ兜町として問題なのは、今回の急騰株が、ストップ高を繰り返したESCO(省エネ)関連株に偏重し過ぎていることである。再生エネルギー関連の本命とされる太陽光発電関連株などは、まったくカヤの外に置かれている。これについては、「固定価格買取制度バブル」で太陽光発電プロジェクトが乱立、なかには事業認定された発電設備の着工を遅らせて差益獲得を目論む悪質業者もあぶり出され、買取価格の引き下げが相次いで打ち出されていることも影響しているようだ。
となると注目されるのは、1月22日に開催予定と報道されている細川護煕元首相の出馬表明の記者会見である。ここでどのような「脱原発シナリオ」が示されるかによっては、関連株の裾野が広がる展開も想定されるからだ。だから兜町は、この記者会見が、細川元首相が、佐川急便からの借入金問題と並んで、1994年に退陣した遠因の一つとなった「国民福祉税構想」を発表したときの記者会見の再現とならないことを祈る以外にない。深夜に設定された同記者会見では、報道陣から消費税を当時の3%から7%に引き上げる国民福祉税の積算根拠を質問された同首相が、あろうことか「腰だめ」と答えて顰蹙を買い、程なく白紙撤回に追い込まれた。「脱原発」シナリオが、この反省を踏まえて実現可能性を示唆することになれば、「アベノミクス」のもう一つの成長戦略関連株として、1月23日の知事選告示、2月9日の投開票日に向け関連株買いが一段と盛り上がるはずである。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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