【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】米12月雇用統計の意外な結果で米FRBの金融政策に対する思惑が交錯

2014年1月12日 12:54

【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】(1月14日~17日)

■リスクオフの動きを強める可能性も

  来週(1月14日~17日)の株式・為替相場は方向感に乏しい展開となりそうだ。前週末10日発表の米12月雇用統計が意外な結果となったことを受けて、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に対する思惑が交錯する。株式市場は年末高の反動で大幅反落した前週の流れもあり、リスクオフの動きを強めてやや不安定な展開となる可能性もあるだろう。

  米12月雇用統計の失業率は6.7%で11月の7.0%から0.3ポイント改善して08年10月以来の低水準となった。労働参加率が0.2ポイント低下したことが主因のようだ。一方で非農業部門雇用者増加数は7.4万人増加で11年1月以来の小幅な伸びにとどまった。11月改定値の24.1万人増加(当初発表に対して3.8万人上方修正)に比べて大幅に鈍化し、市場予想の19.6万人増加を大幅に下回った。この鈍化に対しては、一部地域を襲った寒波の影響があるため伸び鈍化は一時的、11月と合計して平均すれば特に大きな落ち込みではない、改定値で大幅に上方修正される可能性が高いなどの見方があるようだ。

  この結果に対して特にネガティブな反応は見られないものの、12月の米FOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和の規模縮小開始を決定した米FRBにとって景気の見極めが難しくなるとの見方が広がった。そして10日の米国の債券市場では10年債利回りが2.85%台まで低下し、外国為替市場ではドル売り・円買いが優勢となって一時1ドル=103円台まで円が上昇する場面があった。株式市場は方向感に乏しい展開となった。市場では米FRBによる量的緩和の規模縮小ペースが従来予想に比べて鈍化するとの見方と、従来予想に大きな変化はないとの見方が交錯しているようだが、来週も当面は米長期金利低下とドル売り・円買いの動きを強める可能性があるだろう。

  前週の日本株は昨年末の大幅上昇の反動でやや荒い値動きとなり、日経平均株価は週間ベース(12月30日比)で379円25銭(2.33%)下落した。このため一旦はリバウンドを期待したいところだが、当面はリスクオフで不安定な動きとなりそうだ。その後は米主要経済指標や米主要企業の決算発表を受けてのドル・円相場と米国株の動向次第だが、1月10日時点のNT倍率は12.25倍で、昨年末12月30日時点の12.51倍からやや低下したものの依然として高水準であり、NT倍率是正の動きが続く可能性があるだろう。

  物色面では、主力株に対してはリスクオフの動きを強める可能性があるが、NISA(少額投資非課税制度)への新規資金流入や新株価指数「JPX日経インデックス400」への関心の高まりで、指標面に割安感の強い出遅れ銘柄やROE(自己資本利益率)の高い銘柄への物色が注目される。さらに14日から株価の刻み幅が縮小される銘柄(TOPIX100採用銘柄のうち株価が3000円超の銘柄、10日終値時点で42銘柄)の値動きや売買高の変化にも注目しておきたい。10日に2兆9337億円の高水準に膨らんだ東証1部市場の売買代金が引き続き高水準を維持するかも焦点だ。

  注目スケジュールとしては、14日の日本11月経常収支、日本12月景気ウォッチャー調査、ユーロ圏11月鉱工業生産、米12月輸出入物価、米12月小売売上高、15日の日本12月マネーストック、独13年GDP、ユーロ圏11月貿易収支、米1月ニューヨーク州製造業業況指数、米12月卸売物価指数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、ブラジル中銀政策金利、16日の日本11月第三次産業活動指数、日本11月機械受注、日本12月企業物価指数、米12月消費者物価指数、米1月住宅建設業者指数、米1月フィラデルフィア地区連銀業況指数、17日の日本12月消費動向調査、米12月住宅着工件数、米12月鉱工業生産、米1月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。

  その後は、20日の中国12月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、中国第4四半期GDP、21日~22日の日銀金融政策決定会合、22日~25日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、28日の米大統領一般教書演説、28日~29日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、30日の米第4四半期GDP速報値、2月5日~6日の英中銀金融政策委員会、6日のECB理事会、7日の米1月雇用統計などが予定されている。(ジャーナリスト&アナリスト水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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