ダイナムJH Research Memo(6):経営目標は10年後にマーケットシェア10%及び1,000店舗

2014年1月10日 10:26


*10:26JST ダイナムJH Research Memo(6):経営目標は10年後にマーケットシェア10%及び1,000店舗

■中期成長シナリオの分析

○総論

ダイナムジャパンホールディングス<HK06889>のパチンコホール事業を担っているダイナムが現在打ち出しているパチンコホール事業の経営目標は、ダイナムグループとして10年後(2023年3月期末)に10%のマーケットシェアと1,000店舗を実現する、というものだ。市場全体が縮小トレンドにあっても、シェア拡大を通じて、自社の収益成長を成し遂げようという、考え方としてはオーソドックスなものと言える。しかしながら、「10-10-1000」というキーナンバーの水準自体は、かなりハードルが高いように思われる。この目標実現に向けて最も基本となるのは店舗数1,000店というものだ。店舗数は2013年3月末のグループ全体で362店(ダイナム353店、グループ子会社9店)。会社側とのディスカッションの結果、今後3年間は年間40店のペースで出店し、その後(場合によってはそれと並行して)は中小パチンコホールのM&Aも活用しながら1,000店舗を目指すという大まかな方向性を理解できた。

しかし、現状では10年後までにパチンコ市場がどのように縮小、あるいは再拡大するのか、見通すことは難しい。特にカジノ等の新たな要因が加わるとなおさらである。また、中小ホール業者のM&Aにしても、ダイナムが業界で最も経営効率が高い企業であるならば、他社を買収することは結果的に自社の足を引っ張ることにもなりかねない。実際、こういう考えに基づいて、M&Aは一切行わずすべてを自社でゼロから立ち上げることにこだわって成功を収めている企業も多い。

そこで以下では、出店の成否を決める出店モデルと、店舗運営上の経費節減効果の大きいPB機導入に焦点を当てて分析する。

○出店モデルの分析

ダイナムは前述の「10年後にシェア10%、1,000店舗」という目標に向けて、積極的な出店策を打ち出している。その主力は遊技機設置台数が480台の中型・郊外型ローコスト店舗で、業態は「ゆったり館」となる。

出店モデルの概要は以下のようになっている。土地は3,500坪を基本とし、賃借が原則。建物と設備で1店舗当たり452百万円の設備投資を行う。他に遊技機設置費用があり、これは初年度に一括して費用計上する。そのため初年度は営業損失だが2年目以降は黒字化し、初年度の損失も含めて開業後10年間の平均営業利益は年間約130百万円を見込んでいる。

このモデルに基づいた出店を始めたのは2011年度からである。当初は同じモデルの設備投資を約600百万円としていたものを、過去2年間の経験を踏まえて、約450百万円にまで削減してきた。また、現状は1店舗当たり正社員6~7人、アルバイト20人という人員で試算しているが、パーソナルシステムの導入でここまで人員を絞り込むことに成功している。

○PB機導入の効果分析

パチンコホール事業において遊技台の更新投資の削減は大きな課題だ。ダイナムは今後4年間の新規出店と絡めて、PB機の購入割合を上げることでどの程度費用が削減できるか試算結果を出している。同社の分析では、ナショナルブランド(NB)機の単価とPB機の単価差は約10万円もあるので、PB機比率の上昇で更なるコストダウンが期待できそうだ。

注意が必要なことは、コスト的には有利であっても、PB機が集客力を伴わなければ、コストダウンも絵に描いた餅に終わるという点だ。人気機種の集客力は無視できないため、プライベートブランド(PB)機や中古機の導入には慎重にならざるを得ない側面もある。PB機導入が思惑通り進むかどうかは、集客力のある機器の開発ができるかの問題に置き換えられることになる。ダイナムはパチンコホール運営大手企業であって、メーカーが本業ではないため、PB機導入については過度な期待は慎むべきであろう。

○キャッシュフロー分析

ダイナムのキャッシュフローはここ数年、安定している。営業活動によるキャッシュフローは、30,000百万円前後の税引前当期純利益と、約10,000百万円の減価償却費が資金の源泉となっている。一方で法人税等支払が約12,000百万円程度あって、結果的に営業キャッシュフロー約30,000百万円前後で推移している。

投資活動によるキャッシュフローは、基本的は固定資産取得(設備投資額)がその大半を占めている。設備投資額は新規出店へ基本的にリンクする。

同社は10年後の1,000店体制に向けて、当面は年間40店のペースで新規出店を続けるとしている。出店自体は立地条件との兼ね合いもあるため、40店という出店目標が実現されるか不透明であるものの、仮に40店に出店が行われるとすると、理論的に同社の年間設備投資額は40(店)×452(百万円、1店舗当たりの出店時投資額)ということで約18,000百万円となる。これはここ数年の平均的な営業キャッシュフローの約60%の水準になる。

同社は積極的な設備投資と同時に、株主還元についても現状と同じく45~50%の配当性向を維持する方針だ。2013年3月期の年間配当は1株当たり13.00円で、配当支払い総額は約9,700百万円だった。2014年3月期は上期に7.00円の配当実施を決定しており、期末を未定としているが、仮に前期末並みとすると7.25円で年間14.25円となる。発行済株式数が7億4285万株なので、配当支払総額は約10,600百万円となる。

営業キャッシュフローが30,000百万円前後を維持できれば、年間40店舗の出店ペースと、配当性向50%という配当を両立させることは十分可能であろう。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)《FA》

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