スマートフォンの内部に埋め込まれた日本の魂

2014年1月8日 23:08

 2013年、NEC<6701>とパナソニック<6752>が相次いで、スマートフォンの開発と生産からの撤退を表明した。NECはスマートフォンからの撤退理由として、シェア獲得が順調に進まず、出荷台数が減少傾向にあり、スケールメリットが得られないことから、業績改善の見通しが立たず、撤退に至ったようだ。長年、日本の携帯電話市場を牽引してきた同社の決断は、まるで日本の技術力が敗北したかのような、大きな波紋を呼んだ。

 しかし、現実には、日本の技術力は決して敗北したわけではない。確かにスマートフォンの生産メーカーとしては海外各社におされ気味な感はある。アップルをはじめ、韓国のサムスン、台湾のHTC、中国のレノボなどは、日本だけでなく世界の市場に向けて、急激にシェアを伸ばしつつある。でも、それらの製品に内蔵されている部品の多くは、日本製なのだ。今や、日本の部品メーカーが供給する電子部品なくしては、世界のスマートフォン市場は成り立たないといっても過言ではないだろう。

 例えば、ローム<6963>は、2013年9月に従来品と比べて約56パーセントものサイズダウンになる世界最小の抵抗器を開発、さらに半導体も従来品に比べて体積を82パーセントダウンすることに成功しており、高機能化、薄型化が進むスマートフォンの部品開発競争において、同社の誇る極小化技術で優位確保を狙っている。

 電流を制御するのに不可欠な部品である抵抗器は、スマートフォンには1台当たり約200個、半導体は5~6個の使用されており、今回のサイズダウンによって、スマートフォンの小型化や、部品の搭載スペース確保に大きく貢献することが期待されている。抵抗器は昨年10月から、半導体は14年1月から量産体制に入る。

 京セラ<6971>は14年夏より、京都府綾部市に約150億円を投じて建設した新工場を稼動させ、スマートフォンに使用される半導体の樹脂基板事業に本格参入する。同工場ではICチップを載せてプリント基板と電気接続する役割を果たすFCCSP(フリップチップ・チップスケーbルパッケージ)基板と呼ぶ樹脂部品製造し、同社の戦略事業の一つに育て上げる構えだ。

 また、積層セラミックコンデンサー(MLCC)で世界シェアトップの村田製作所<6981>は12年9月、実に8年ぶりに業界最小を更新するMLCCを開発して話題になったが、13年は、スマホに組み込まれる主要電子部品の一つであるSAWフィルターの生産能力を段階的に引き上げ、増産体制に入っている。他にも、TDKの複合電源管理モジュールや、エルピーダメモリのモバイル用DRAMなど、スマートフォン内部を見ると日本製の部品がひしめき合っている。

 また、官民出資の投資ファンドである産業革新機構が70パーセント、残りをソニー<6758>、東芝<6502>、日立製作所<6501>がそれぞれ10%ずつ出資し、ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社の事業を統合した、日本連合艦隊とも言うべき液晶会社「ジャパンディスプレイ」も、すでに昨年11月に上場申請を済ませており、すでにスマートフォンやタブレット用だけでなく、ウェアラブル端末用の小型液晶パネル2種類の量産を始めている。

 日本には「縁の下の力持ち」という言葉がある。まさに今、全盛のモバイル端末市場を縁の下で支えているのは、こういった日本の確かな技術力。日本のものづくりの魂なのだ。(編集担当:藤原伊織)

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